1999年に自民党と公明党が連立を組んでから、25年が過ぎようとしている。政権を失って共に下野した期間があったにもかかわらず、ここまで長く連立関係が続く例は、各国を見渡しても稀だ。政策的には反発と妥協を繰り返しながら、“選挙で勝つ”を最大の目的に繋がってきた自公だが、その関係についに、決定的な亀裂が走ろうとしている。
総理の“二股”への怒り
政治資金規正法の改正案づくりで自公が条文をめぐって対立し、自民党が単独で改正案を提出。自公が連立を組んで以降、重要法案では初めての事態だ。元公明党幹部が語る。
「岸田(文雄)首相は公明党の忠告に聞く耳を持たない。連立離脱の話になってもおかしくないくらいの問題です」
公明党の意思をはっきり示したのが山口那津男・代表の発言だ。首相も出席した5月13日の政府与党連絡会議で政治資金規正法の改正について「野党を含めた協議を急がなければならない」と言い放った。政治ジャーナリスト・泉宏氏が指摘する。
「政府与党の会議で公明党代表が『野党と協議する』と宣言した。自民党との協議からは手を引くという意味ですから、極めて異例の発言です。これまでの自公連立では考えられません」
公明党が不信感を募らせているのは、岸田首相の“二股”にある。
自公の法案協議の裏で、首相側近の木原誠二・幹事長代理らが日本維新の会にも水面下で協議を持ちかけていたからだ。
5月21日には自民と維新の国対委員長会談が行なわれ、維新が企業・団体による政治資金パーティー券の購入禁止など、公明党よりハードルが高い独自案を示したことから協議はまとまらなかったが、実はその前日、維新の地盤である大阪府議会の副議長選びで自民と維新の“接近”を示す出来事があった。
府議会最大会派の大阪維新の会がこれまで副議長を出していた第2会派の公明党を外し、第3会派の自民党に副議長ポストを与えたのだ。これで自公の亀裂は一層広がった。前出の元公明党幹部の言葉は厳しい。
「自民と維新の接近は、岸田首相が総選挙で自民が議席を大きく減らした場合に、維新を連立に加えることをにらんで秋波を送っているということでしょう。
しかし、その前に政治資金規正法の改正がある。自民党は参院で過半数を持っていないので、首相が今国会で改正案を成立させるためには公明党の賛成が欠かせない。当然、公明党に法案修正を持ちかけてくるだろうが、簡単には妥協しない。山口代表が首相に通告したように、この問題では野党の主張に与することになる。
そうなれば法案修正協議は大揉めになり、最終的には岸田首相の退陣表明と引き換えに改正案を成立させるという状況になることも考えられる。自民党が単独で修正案を出した段階で、公明党執行部はそういう展開をにらんでいる」
国会最終盤で公明党による“岸田降ろし”が勃発するという見方だ。
※週刊ポスト2024年6月7・14日号