沖縄島北部に生息する絶滅危惧種のヤンバルクイナは、車にひかれたカエルなどの死骸を食べに路上に出た際、交通事故死(ロードキル)に遭っている可能性があることが、琉球大チームの実験でわかった。ヤンバルクイナは5~7月の繁殖期に路上に現れることが多く、環境省はドライバーへの注意喚起を強化する。
同省によると、ロードキルに遭ったヤンバルクイナは1995年の調査開始から昨年まで計517羽。道路にフェンスを設置するなどの対策を進めたが、年20~30羽が犠牲になっている。
ヤンバルクイナが生息する沖縄島北部のやんばる地域は世界自然遺産に登録され、ハナサキガエルなどの固有種を含む貴重な両生類や 爬虫 類も多い。これらはロードキルに遭ってもカラスなどが死骸を持ち去るとみられ、実態は不明だった。
同大の辻和希教授(動物生態学)らは、ハナサキガエルとほぼ同じ大きさの鶏の手羽元を用意。昨年4~8月、同省の許可を得て、やんばる地域を通る県道の9か所に一晩置く実験を行った。計54個の手羽元は翌日までになくなり、カメラで自動撮影できた15個のうち2個で、ヤンバルクイナがくわえる様子を確認した。
日本動物行動学会で報告したチームの大学院生・丸田裕介さんは「カタツムリや虫などを捕食する行動は知られているが、死骸を食べる可能性がわかったのは驚きだった」と話す。
森林総合研究所の小高信彦主任研究員の話「実際の死骸を使った検証が必要だが、道路が野生動物の餌場となっていることをわかりやすく示した成果だ」
◆ヤンバルクイナ=1981年に新種として発見された国内唯一の飛べない鳥。全長は約30センチ。人が放ったマングースやネコによる捕食、ロードキルなどで1000羽以下に激減したが、マングースの捕獲対策などが進み、1500羽程度まで回復している。