紅麹被害の原因「青カビ」の謎…世界中の土壌に分布、被害報告なく研究者「注目されてこなかった」

小林製薬(大阪市)の「 紅麹 」成分入りサプリメントを巡る健康被害問題で、厚生労働省が原因として指摘した青カビの一種は、これまで健康被害を起こしたという報告がなく、研究が進んでいなかった。サプリの原料からは新たに二つの化合物も見つかり、厚労省が調査中だが、全容の解明には時間がかかりそうだ。(松田俊輔、村上和史)

小林製薬が3月に健康被害を公表したことを受け、調査に乗り出した厚労省は5月28日、青カビ由来の物質「プベルル酸」が腎障害を引き起こすことを動物実験で確認したと発表した。
青カビは環境中に広く分布し、数百種類が知られている。パンや餅など食品に付着して増えるものや抗生物質のペニシリンを作るもの、チーズの製造に使われるものなどが有名だ。今回見つかった青カビは「ペニシリウム・アダメチオイデス」という、世界各地の土壌で確認されている種類で、国内でも1950年代以降、複数回報告されている。
カビの研究は、食中毒を起こす種類については進んでいるが、この青カビにはこれまで健康被害の報告がなかった。カビに詳しい大阪市立自然史博物館の浜田信夫・外来研究員は「あまり注目されてこなかった種類だ」と話す。
しかし今回、同社の工場から検出された青カビは、プベルル酸を作ることが、国立医薬品食品衛生研究所(川崎市)の分析でわかった。青カビにはプベルル酸を作る種類があり、今回のカビも、何らかの原因でその能力を獲得したと考えられる。

5月の発表で厚労省はサプリ原料から、プベルル酸のほか、本来含まれないはずの二つの化合物が見つかったことも明らかにした。
通常、紅麹菌とカビを一緒に培養しても同時には増えない。紅麹菌が作る物質がカビを攻撃するためだ。今回見つかった二つの化合物はこの物質と構造がわずかに違っているという。帯広畜産大の豊留孝仁准教授(真菌学)は「青カビが、攻撃を無効にしたり弱めたりするために紅麹菌の作る物質を作り替えたのではないか」と指摘。結果的に、紅麹菌と青カビが同時に増えた可能性があるとする。
サプリの摂取者に健康被害が出たのは、昨年6~8月に大阪工場で製造された原料に限られているため、厚労省は混入経路などを調べている。

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