「党首討論」開催決定
岸田文雄首相は12日夜(日本時間13日早朝)、G7サミット(先進7カ国首脳会議)が開かれるイタリアに到着した。〝得意〟の外交で成果を狙いたいが、政治資金制度改革や憲法改正の足踏みへの批判は強まるばかりだ。場当たり的な岸田首相の政治手法に、主流派として支えてきた麻生太郎党副総裁はブチ切れ状態といい、四面楚歌(そか)の様相だ。こうしたなか19日に与野党の党首討論開催が決まり、岸田首相の〝暴走〟を懸念する声も上がる。終盤国会は混迷を深めそうだ。
「G7として、国際社会が直面する諸課題に向け、議論をリードしていく姿勢を示す機会にしたい」
出発前、官邸で記者団にこう意気込みを語った岸田首相だが、肝心の国政のかじ取りは厳しさを増している。
政治資金規正法改正案の修正をめぐり、岸田首相は公明党に譲歩し、パーティー券購入者名の公開基準額を自民案の「10万円超」から「5万円超」に引き下げた。調査研究広報滞在費(旧文通費)の使途公開などでは日本維新の会の主張を受け入れ、改正案への賛成を取り付けた。
だが、自民党内では一連の〝妥協〟に根回しがなかったことに怒りが充満しているという。
麻生氏は8日、「政治資金の透明性を図ることは当然だが、将来に禍根を残すような改革は断固避けなければならない」「将来、国会議員を目指す若者が、政治資金を確保できないから政治を断念するのは甚だ残念だ」と、怒りをにじませた。
党関係者らによると、「麻生氏の怒りは本物」といい、岸田氏が今回の外遊前に呼びかけた会食は結局、実現しなかったという。
また、今国会中の憲法改正原案の提出を見送る方針を固めたことに、党内保守派は不満を募らせている。
不穏なムードのなか、自民党と立憲民主党は19日にも、岸田首相と野党党首の党首討論を3年ぶりに開催することで合意した。通常国会会期末を23日に控え、野党は内閣不信任案の提出も念頭に置いている。
9月の自民党総裁選で、岸田首相は再選を目指しているとされるが、内閣支持率は再び底抜けの下落を見せ、党の地方組織から「退陣」を求める声が公然と上がっている。
それだけに、「局面打開のために、負けを覚悟の上で起死回生の解散・総選挙に打って出るのではないか」(自民党議員)と、首相〝暴走〟の憶測が広がっている。
政治評論家の有馬晴海氏は「麻生氏は、岸田首相が唐突に打ち出した『派閥解消』に応じず、唯一麻生派を存続させた。根回しのない行動を繰り返す岸田首相に思うところはあるだろう。一方、岸田首相は総裁選での支持に期待しており、麻生氏への対応を誤れば、再選の目が潰えると理解している。それぞれの思惑をはらみ、終盤国会は緊張感が増していく」と語った。