東京都知事選が7日に投開票された。小池百合子知事が291万8015票を獲得し、大方の予想通り、3回目の当選を果たした。
インターネット動画が多数の再生回数を誇り、連日、約10カ所も街頭演説を行った前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏は165万8363票を獲得して大いに健闘した。
衝撃的だったのは、立憲民主党を離党して出馬した前参院議員の蓮舫氏が128万3262票しか獲得できず、石丸氏に及ばなかったことだ。
蓮舫氏は「反自民・非小池」をスローガンに掲げ、「行革の専門家」をアピールしたが、訴えは都民の心には刺さらなかったようだ。
〝失敗の理由〟として、まず、「小池知事と対等にいようとし過ぎた」ことが挙げられるだろう。
参院議員として約20年のキャリアがあるとはいえ、蓮舫氏は都知事選ではチャレンジャーだ。にもかかわらず、平日はもっぱら、公務を優先する小池氏に合わせるかのように、蓮舫氏の街頭演説の回数はさほど多くはなかった。
その代わりに、熱心に活動したのは共産党だ。ただ、蓮舫氏の顔を印刷した幟を立てて応援していた会場の多くで、肝心の蓮舫氏自身の姿は見ることはなかった。
ネット戦略もうまくなかった。蓮舫氏が公約を発表したときの公式チャンネルの同時接続数は、2600に過ぎなかった。さまざまなチャンネルで街頭演説の様子が配信された石丸氏と比べても差があった。
最大のミスは、「過去の知名度を過信したこと」だろう。これは選挙を取り仕切った責任者らの問題かもしれない。
2010年の参院選で171万票を獲得した蓮舫氏は、22年の参院選で、67万票しか得られなかった。
投開票前から、厳しい情勢は明らかだった。
あるメディアの選挙班が7月4日に行ったとされる「票読み会議」では、小池氏は約260万票、石丸氏が160万票に対し、蓮舫氏は110万票にとどまった。この分析は、かなり正確だった。
立憲民主党は、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件をめぐる「政治とカネ」の問題を契機に、一気に反転攻勢をかけようとしているが、今回の惨敗は、これに水を差すことになりそうだ。
一方、17日間の選挙戦で228回も街頭演説をした石丸氏は、野心をさらに燃やし、国政進出について「選択肢として当然考える。例えば、衆院広島1区」と、岸田文雄首相の選挙区を名指しした。だが、石丸氏の地元である安芸高田市で7日投開票された市長選では「石丸市政の転換」を訴えた新人が当選した。
政治とは常に栄枯盛衰だ。それにしても、小池氏のしぶとさが際立っている。 (政治ジャーナリスト・安積明子)