浴槽でおぼれかけていた高齢者を救ったとして、和歌山市消防局は元西消防署長の 田广 邦夫さん(74)(和歌山市宇田森)に感謝状を贈った。田广さんは「引退しても、市民を守るのは当然のことだ。42年間、消防で磨いた感覚や技術が生きた」と話した。
市消防局などによると、田广さんは5月12日夕、自宅近くの独居男性宅で、風呂場の電気が1時間以上ついているのに気づいた。不審に思い、夕食を届けに来た男性の家族に相談。風呂を外からのぞくと、男性は浴槽で気を失っていた。すぐに消防に通報。家族が鍵を持っていなかったため、田广さんが窓をハンマーで壊して室内に入り、引っ張り出した。男性は病院に搬送されたという。
1968年に消防に入った田广さんは、交通事故や災害などの現場に向かう救助隊の一員として活動した経験があった。2010年に退職し、近年は地域のボランティア活動をしている。
6月24日に市消防局で行われた表彰式で、谷口佳生消防局長は「“消防魂”を持ち続けるOBの姿は地域にとって心強い」と感謝した。田广さんは「数日前からあいさつを交わしても元気がなかった。様子がおかしいと思い、すぐに体が反応した」と振り返り、「最初に異変に気づけるのは近くの市民。地域で声をかけ合い、進んで手を差し伸べる心遣いが広がってほしい」と語った。