広島土砂災害から10年 遺族が慰霊碑前で手を合わせ

災害関連死を含めて77人が犠牲となった広島土砂災害は、20日で発生から10年を迎えた。広島市安佐南(あさみなみ)区と安佐北区の被災地では献花台が設置され、訪れた人々が犠牲者をしのんだ。
安佐南区八木地区の市立梅林小にある慰霊碑前では、立川新三さん(87)が手を合わせた。兄洋二さん(当時81歳)と兄の妻で82歳だったサチコさんを亡くしたという。
立川さんと兄夫婦は長く八木地区で暮らし、一緒に山登りに行くほど仲が良かった。「以前は慰霊碑の名前を見ると『(兄夫婦が)何でこんなとこにいるんだ?』と悲しみに襲われていた。10年たってようやく一区切りをつけることができました」
広島土砂災害は2014年8月20日の未明に起きた。線状降水帯による集中豪雨が影響し、安佐南区と安佐北区では土石流や崖崩れが多発。全半壊396棟を含む計4749棟の住宅が被災した。
土砂災害を受けて、市内では対策が進んだ。国は20年8月までに安佐南区、安佐北区に砂防ダム計40基を整備した。広島市は、巨大な雨水管を道路の地下に設けた。
相次ぐ豪雨災害による被害を防ごうと、広島県は県内の市街化区域を、開発が制限される市街化調整区域に戻す「逆線引き」を検討している。25年3月までに実施する計画で、対象の市街化区域は広島土砂災害の被災地の一部も含まれる。
あの日から10年がたち、教訓をどう伝えていくかが課題となる中、広島市の「豪雨災害伝承館」は23年9月に開館した。被災者の証言などの展示や防災講座を通して、防災の必要性を発信している。【井村陸】

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