東京電力は22日、福島第1原発の溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の初回収に向けた2号機での試験取り出しを、開始直前で中断し延期した。装置を押し込むパイプをつなぐ順番にミスがあったという。再開のめどは立っていない。
燃料デブリの回収は、政府や東電が最長40年で終えるとしている福島第1の廃炉の最難関とされる。今回の作業はその試金石となるが、出だしからつまずく形となった。
東電はこの日午前7時24分に準備作業を始めた。しかし約1時間後、燃料デブリを取り出すための釣りざお式の装置を押し込むパイプ5本(約1・5メートル、約95キログラム)の接続準備をしていたところ、1本目をつなぐ時点で、パイプの順番が違っていたことが判明したという。
パイプは5本とも装置のケーブルを通しており、正しい順番に並べ直すためには、ケーブルを抜き取る必要がある。作業は原子炉建屋内で行っており、放射線量が高い。被ばくを抑えるため東電はこの日の作業を2時間程度で終える計画で、この時間内の復旧が難しいと判断。午前8時53分に作業を中断した。
パイプとケーブルの接続は7月28日にこの現場で行われた。ミスはこのときに起きたとみられるが、その後の点検でも見落とされていた。東電は記者会見で「初歩的なミス」と認め、原因調査が終わるまで作業は再開しないと説明した。
今回の作業では、格納容器内部にある圧力容器を支える土台(ペデスタル)底部に釣りざお式の装置を入れ、最大3グラムの燃料デブリを採取する計画。順調に進めば、開始から回収まで約2週間で終える見込みだった。
福島県はこの日、東電幹部を県庁に呼び、「人為的かつ初歩的なミスであり、県民に大きな不安を与えかねない」として再発防止を申し入れた。
東電の小早川智明社長は訪問先の新潟県柏崎市で記者団の取材に「焦って進めて大きなトラブルになるよりは、安全、着実に進めることが必要だ」と述べ、23日に福島第1を訪ねて原因を聞き取る意向を示した。【高橋由衣、松本ゆう雅、内藤陽】