新宿御苑でカブトムシ多数目撃、SNSに「見応え」「大量発生」 ナラ枯れ増加と関連か

新宿御苑(東京都新宿区、渋谷区)で、カブトムシの観察ができるとして話題となっている。「大量発生」「見応えある」。交流サイト(SNS)上には7月以降、投稿が目立つ。都心にあって訪れる親子連れも多く、夏休みの思い出作りにも一役買っているようだ。ただ、カブトムシの発生は決して喜ばしい状況ではない。都心の樹木が悲鳴を上げている証しでもあるからだ。
実は、カブトムシの生息は樹木の枯死と隣り合わせ。発生するのは、近年、都内の公園で相次ぐ〝ナラ枯れ〟と密接な関係があるとみられている。
樹木は外敵から攻撃を受けると樹液を出す。この樹液にカブトムシが集まってきているのが新宿御苑の現状だ。問題はこの外敵からの攻撃。環境省新宿御苑管理事務所の担当者によると、「攻撃はさまざま考えられるが、その1つにカシノナガキクイムシ(カシナガ)によるものが挙げられる」という。
カシナガは体長5ミリほどの昆虫で、コナラやクヌギなどに直径2ミリほどの横穴をあけて卵を産む。この際、樹木を枯死させるナラ枯れの原因となる菌を媒介する。枯死した樹木は、枝折れや倒木の他、感染を拡大させる恐れもあるため、伐採が必要となる。カブトムシが集まっていた新宿御苑の樹木の根元にも、カシナガが開けたとみられる横穴があった。
都が管理する公園では、令和元年に初めて約380本のナラ枯れが確認され、5年度には約2万9400本に達するなど急増。新宿御苑でも元年に初めてナラ枯れを確認して以降、毎年10本前後の樹木が枯死しているという。
新宿御苑では対策として、樹木に薬剤を注入する方法で対策をしているが、カブトムシが集まってきている樹木も、今後の経過次第では伐採する可能性が否定できないという。
担当者は「樹木が衰弱すると、カシナガが入りやすくなる。環境を健全に保つためには、衰弱した樹木を早めに伐採することも必要。適時対策を講じることで、歴史的な樹木を守っていきたい」と話す。
なお、新宿御苑は動植物の採取が禁止。観察は可能だが、「(樹液を求めて)スズメバチも集まっているため、注意してほしい」と呼び掛けている。(大波加将太)

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