京都市の桂川に流され、一時意識不明となった2歳の男児を救助した男性保育士に、右京消防署と京都府警右京署から感謝状が贈られた。男児の命を救ったのは、保育園の講習で身につけた胸骨圧迫などの心肺蘇生法だった。男児は元気に回復し、家族らと参加した贈呈式で「ありがとう」と保育士に感謝を伝えた。(相間美菜子)
右京区の桂川は今月14日、天候に恵まれ、朝から多くの家族連れでにぎわっていた。そんな中、両親らと水遊びをしていた伏見区の男児(2)が午前10時45分頃、川に流された。
数十メートル下流で子ども2人と遊んでいた大阪府高槻市の保育士、湯口修平さん(41)の目に、上流からうつぶせ状態で流れてくる男児の姿が映った。水深は大人でやっと足が着くほどで、男児はライフジャケットを着ていたが「動きがない」。川岸で男児の父(28)が叫ぶ姿を見て、無我夢中で男児に飛びついた。
川から男児を引き上げたが、息をしておらず、顔は真っ白だった。「救急車を呼んで」と周囲に叫び、「絶対に助ける」と人工呼吸と胸骨圧迫を繰り返した。
2~3分後、男児はせき込み、意識を取り戻した。その後、救急隊が病院に搬送し、翌15日に退院。今は元気に暮らしている。
湯口さんは約20年の経験を持つベテラン保育士で、大阪市の保育園で2歳児を担当。年に1度、消防隊員や看護師から乳幼児の心肺蘇生法に関する講習を受けており、人工呼吸のほか、体が小さい子どもに合わせた指2本や片手での胸骨圧迫などを学んできた。
右京区の右京消防署で25日に行われた贈呈式では、同消防署の竹内真一署長と、右京署の西谷真嗣署長が湯口さんに感謝状を手渡した。男児の家族も出席し、父親は「息子が死んじゃうかもしれないとパニックになった。湯口さんがいなかったらどうなっていたか……。感謝してもしきれません」と話した。
心肺停止になった人の救命率は、1分たつごとに数%低下するとされている。竹内署長は「水難事故は一刻も早い救命措置が重要。勇気のある的確な行動だった」と湯口さんをたたえた。
湯口さんは「あの時は目の前の命に必死で、何も考えられなかった。元気な男児に会えて、本当に良かった」と喜んでいた。