岩田温 日本の選択 自民党の力の根源は「派閥」にこそあった 解散で候補者が乱立する総裁選 注目は唯一存続する「麻生派」の動向

自民党総裁選(12日告示、27日投開票)は、過去最多の7人以上の立候補が確実な情勢となった。林芳正官房長官(63)は3日、茂木敏充幹事長(68)は4日、小泉進次郎元環境相(43)は6日、高市早苗経済安保相(63)は9日に会見を開く方向だ。岸田文雄首相が「派閥解消」を打ち出したことも要因だが、国内外の情勢を見据えて、「国家のリーダー」にふさわしくなさそうな人物もいる。派閥には弊害もあるが、切磋琢磨(せっさたくま)して総裁候補を育てる機能もあった。政治学者の岩田温氏は、かつて「自民党の力の根源」だった派閥に迫った。

今回の自民党総裁選で、最大の特徴は「派閥なき総裁選」となったことであろう。派閥による裏金事件という事態を受け、岸田文雄首相が宏池会(岸田派)の解散を決定し、他派閥も次々と解散を決定した。
現在、派閥として存続し続けているのは、麻生太郎副総裁の志公会(麻生派)だけだ。だが、麻生派に所属しながら総裁選への出馬を表明した河野太郎デジタル相(61)は、自身が首相に就任すれば、ただちに派閥を離脱し、閣僚や党三役にも離脱させる方針を表明している。
確かに、過去の事例を眺めれば、首相に就任した政治家が派閥を離脱することは異常な事態とはいえない。
しかし、より注目すべきは、派閥の領袖(りょうしゅう)たる麻生氏の動向だ。麻生氏は「同じ釜の飯で育った同志」として、自らは河野氏を支持する意向であり、河野氏への支持を促してはいるが、他候補を応援することも容認している。
事実、派内では甘利明前幹事長が小林鷹之前経済安保相(49)を、山東昭子前参院議長が上川陽子外相(71)を支援する動きが知られている。
派閥が存在した最大の意義は「総裁選における政治家の団結」にあった。総裁選で一致団結して総裁を輩出、あるいは主流派となって権力を握るのが自民党の派閥政治の本質だった。唯一、派閥として存続し続けた麻生派がどのような動きをするのか。ここに私は注目していた。
麻生派に所属する務台俊介衆院議員は旧二階派の小林氏の支持をいち早く打ち出した一人だが、X(旧ツイッター)において8月31日、次のように正直な心境をつづっている。
「私の行動に対して麻生先生がどのように判断するのか、正直びくびくしていましたが、研修会の場で、麻生先生は河野太郎代議士を支援するが、この場にいる国会議員は自分が支えたいと思う人物を応援することは止めない、とおっしゃって頂きました。私も麻生先生に直接、同期の小林鷹之を応援したいと申し上げると、しっかりと決勝に残るように頑張れと励まされました」

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする