自民党総裁選に5回目の出馬を決めた石破茂元幹事長が、「アメリカ本土に自衛隊の基地を置くべき」と 「 文藝春秋 」編集部のインタビュー で明らかにした。日米同盟強化のためだが、総裁選での争点にもなりそうだ。
「アメリカの広大な基地での訓練も必要」
「米国に自衛隊の基地を置くことも考えるべきです。もちろん前方展開のためではなく、主に訓練のためでいい。陸上自衛隊も、航空自衛隊も、十分な訓練地が確保できていない。きちんと練度を上げていくためには、アメリカの広大な基地での訓練も必要になる」
石破氏がこう主張する背景には、日米地位協定の問題がある。地位協定で米軍は日本の法規制を受けないと定められているため、米軍人の犯罪を日本側が裁けないなど、様々な問題が起きている。
在日米軍基地を多く抱える沖縄県は、地位協定の見直しを歴代首相に要請しているが、実現していない。原点は戦後占領期にさかのぼる負の遺産だけに、石破氏は在日米軍基地の共同管理から始めるべきだと説く。
「地位協定そのものを見直す前に、在日米軍基地を可能な限り共同管理にすべきです。管理権を日本側が持つところまで信頼関係を高めなければならない。実任務上ということになりますから、自衛隊も相当の覚悟と訓練が必要になりますが、同盟関係を対等に近づけるというのはそういうことです」
「間違いなく日米同盟の強化につながる」
その上で、アメリカ本土に自衛隊の基地を置くようになれば、必然的に新たな地位協定を結ぶことになる。
「(米国に)一定期間自衛隊が駐留することを想定して、在米日本自衛隊地位協定を結ぶこととすれば、はじめて『同一、対等』の地位協定を結びあうことができる。
実際にこの話を米国当局の高官に何度かしてみたことがありますが、概ね好意的に受け止められました。もちろん、実際に進めていくのはそう簡単なことではありません。戦後の日米関係の根幹的な部分ですから。しかし、間違いなく日米同盟の強化、抑止力の向上につながる施策ということを国内外で説明していかなければいけないと思います」
「今までと同じ基地負担はおかしい」
だが、11月の米大統領選挙でトランプ前大統領が勝てば、今まで以上に在日米軍基地に関する費用の負担を求められる可能性もある。石破氏は次のように論じる。
「平和安全法制を制定して、限定的とはいえ集団的自衛権の行使を容認したのに、今までと同じような基地負担を求められていることのほうがおかしいでしょう。日米安保条約の根幹は、米国の集団的自衛権行使と日本の基地提供が双務となっているのですから、我が国が集団的自衛権を一部とはいえ行使するなら、基地提供の義務はある程度軽減されてしかるべきです」
インタビューで石破氏は、近年緊張が高まっている中国との関係をどう再構築するか、災害対策を一元化するために防災省を設置する案などについても語った。
インタビュー全文は「 文藝春秋 」10月号(9月10日発売)と「 文藝春秋 電子版 」に掲載されている。また、「 文藝春秋 電子版 」ではインタビュー動画も配信している。
(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2024年10月号)