自民党総裁選(12日告示、27日投開票)への立候補を正式に表明した高市早苗経済安保相(63)は、記者会見で「経済成長をどこまでも追い求める」「日本をもう一度世界のてっぺんに押し上げたい」と強調した。総裁選では小泉進次郎元環境相(43)が労働市場改革の柱として「解雇規制の緩和」を打ち出しているが、高市氏は、これに明確に「反対」の意向を示した。経済界には解雇規制の緩和を求める声もある一方、中高年を標的にした〝クビ切り〟に使われたり、日本の技術や情報が海外に流出したりするリスクもあると識者は指摘する。
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高市氏は9日の記者会見で、「国の究極の使命は国民の生命と財産、領土・領海・領空・資源、国家の主権と名誉を守りぬくことだ」として「総合的な国力の強化」を掲げ、外交、防衛、経済、技術、情報、人材の6つの力をそれぞれ伸ばすとも訴えた。
「皇統」を守るための皇室典範の改正、拉致問題の解決、国防体制の構築など保守政治家としての姿勢を見せ、首相就任後も靖国神社参拝を続けるか問われると「国策に殉じられ祖国を守ろうとした方に敬意を表し続けることは、私が希望するところ」と述べた。
経済政策について高市氏は「先端技術を開花させるための戦略的な財政出動」によって、雇用や所得を増やし、強い経済を実現するとした。
解雇規制の見直しについて問われると、「反対だ。日本の解雇規制がきつすぎるかというとそうではない。解雇をする条件というのは一定程度しっかり労働者の方々を守るという意味だが、さまざまな指標を見ると(先進国の中でも)割とまだ緩い方だ。解雇規制緩和の必要はないと思っている」と明言した。
解雇規制緩和は、小泉氏が6日の出馬会見で表明して話題となった。企業は解雇に踏み切る前に希望退職者の募集や、配置転換の努力をすることが義務付けられているが、大企業に限って撤廃し、代わりにリスキリング(学び直し)や再就職支援を課すとした。また、希望者には労働時間の上限を緩和する考えも示した。小泉氏は「不退転の覚悟で来年には国会に法案を提出する」と踏み込んだ。
解雇規制をめぐっては、企業が賃上げに慎重な要因になっているとの見方もあり、経済界には小泉氏の案を歓迎する声もある。一方、リストラに悪用される懸念や、残業時間の見直しで労働環境の悪化リスクも指摘される。
荻原博子氏「50代以上のリストラに使う懸念」
経済ジャーナリストの荻原博子氏は「若者は黙っていてもスキルを身につけて活発に転職しており、企業側は雇用規制の緩和を『働かないのに給与が高い』という理由で50代以上のリストラに使う懸念は否定できない。50代は大学生などの子供を養っている人も多いが、リスキリングをしても必ず就職先が見つかるわけではない。失業すれば世帯の可処分所得の減少にも影響しかねない。解雇規制緩和のすべてを否定はしないが、急いで大看板を掲げる話ではない」と話す。