京都・東山で苔庭の名所としても知られる「高台寺 岡林院(こうりんいん)」が2024年9月中旬、客連れカメラマンたちをはじめとする「マナー」の悪化についてXで注意喚起し、その内容に驚きが広がっている。
現場では物が壊れる損害が出たほか、ゴミのポイ捨てや隠れ喫煙などの問題が日々相次いでいるという。J-CASTニュースは19日、岡林院の青山住職に詳しいいきさつを聞いた。
土地や文化への「リスペクトをお願いしたく」
豊臣秀吉と妻・ねねと縁の深い高台寺で現存するうち、最も古い塔頭(たっちゅう)が岡林院だ。寺の北に位置しており、円山公園から南に走る「ねねの道」を東側へ曲がると、岡林院に続く「参道」となる。突き当りには3体のお地蔵さんが祭られている。
そこでの出来事がXで知れ渡ったきっかけは、岡林院が16日以降、「書院の入口の欄干が何者かによって破壊されました」などと写真を添えて連投したことだ。
写っているのは参道に面する短い橋で、地面には、欄干の一部だった竹が転がっている。参道では観光客を連れた外国人カメラマンによる撮影が後を絶たず、ゴミのポイ捨てが横行しているとし、「ここ最近は特にマナーが悪過ぎます」と注意喚起した。
Xでは「国籍を問わず観光の方々が、個人的に撮影する分には大歓迎ですしカメラを預かって撮影したこともあります」と念押し、投稿に至った意図を「特定の国や誰かを批判するつもりではありません。せめて、住んでいる人、その土地の人々や文化へのリスペクトをお願いしたくて投稿しました」と説明した。
マナー問題をめぐって、Xでは、18日にもこのようなエピソードを明かしていた。
誰かが欄干に寄りかかって壊れた…?
取材に応じた投稿者の青山住職によると、周辺ではレンタル着物らしき装いの観光客と番傘や機材を持ったカメラマンとの同伴姿が増えている。カメラマンたちは大体同じような顔ぶれだという。
先述した欄干の竹は老朽化で元々外れやすく、人が川に落ちないよう「立ち入り禁止」「危険」などと日本語と英語の張り紙をしていたと説明する。参道からの侵入を防ぐため、以前から結界の竹も設置している。
しかし1年ほど前から、参道での撮影時に張り紙が映り込むのを邪魔に思われてか、カメラマンに剥がされるイタチごっこが続いていた。そして今回、経緯は不明だが欄干が壊れた状況だ。
欄干の石柱1本は根本から折れて上部が砕け、間に渡されていた竹は外れ、近くにあったスポットライトは破損した。青山住職は、警察に相談して現場の写真記録などが行われた際、原因について下記のような仮説が出たと話す。
警察からは、故意に壊したのでなければ、被害届の受理は難しいと伝えられたという。ただ、パトロール強化をするとも伝えられたといい、岡林院側でも今後は監視カメラ導入を検討している。
「皆が笑顔で楽しい旅だねと言えるのが1番です」
青山住職は、撮影について「個人で楽しむ分には構わない」と考えており、カメラマンの同伴自体を禁止しているわけではない。例えばこれまで日本のカメラマンはブライダルフォトなどの撮影にあたり自ら許諾を求めてくるケースも多く、理解を示したうえ「占領さえしなければ止めはしなかった」。
先述したような着物姿の観光客に同伴するカメラマンに関しては、檀家やお参りの人たちが通過する時は撮影を中止するよう求めても、基本的に無視されていたと振り返る。
今回の出来事に限らず、東山では普段から食べ歩きのゴミなどが放置されるなど、マナーの悪化が問題になっているとも危機感を表す。青山住職は国にかかわらず相手を尊重する心や、自分なりに文化を理解しようとする必要を説いている。