高市早苗氏はなぜネット人気が高いのか 靖国参拝、深事件対応で「首相コール」

自民党総裁選をめぐって、各種の世論調査で高市早苗経済安保相が急浮上し、石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相と「三つ巴」の様相を呈してきた。
2024年9月27日の投開票では、当初最有力とされていた進次郎氏をおさえて、石破・高市の決選投票になる可能性も指摘されている。
そうした状況もあって、「なぜ高市氏がネットで人気なのか」をテーマに、その理由を考察してみたい。
「キッパリ言う保守」を求める人々
ネットに限らず、ここにきて高市氏の支持が急上昇している理由は、ひとえに強いリーダーシップが求められていることにあるだろう。SNSを見る限り、「キッパリ言う人物」に期待している人々は多い。
9月20日には、共同通信が民間のSNS分析サービスで集計したところ、高市氏に言及するX投稿が9候補中トップだったと報じられた。ときにはハッシュタグ「#高市早苗さんを総理大臣に」が、Xでトレンド入りすることもある。他の有力候補である石破氏、進次郎氏らには、こうした動きは見られない。
こうした「ネット人気」の背景を見てみると、高市氏自身の人柄以上に、むしろその政治的スタンスが支持されているように感じる。
奈良県出身の高市氏が繰り出す「ラフな関西弁」や、舌鋒(ぜっぽう)鋭い発言と笑顔のギャップなどが、親しみやすさを感じさせている部分もあるだろうが、それよりも「保守的な政治思想」を理由に選ばれている印象を受けるのだ。
高市氏は今回の総裁選に、「日本列島を、強く豊かに。」「#サナエあれば、憂いなし。」のキャッチコピーを掲げて挑んでいる。
「総合的な国力」の強化を訴え、防衛・外交力の強化や、「日本人の手による新しい日本国憲法」の制定、皇室典範の早期改正などを掲げている。
これらの政策提言を読むと、今回の総裁選候補者の中では少数派である、いわゆる「タカ派」の雰囲気を感じさせる。
「高市氏でないと中国に立ち向かえない」の声
日頃からの発信も、保守色を前面に出している。高市氏は首相就任後も、首相の立場で靖国神社を参拝する考えを示している。
この発言は以前から度々繰り返してきたが、中国や韓国などからの反発や、政教分離の観点から、批判的な意見も多々ある。しかし高市氏の支持者からは、「他国の内政干渉を気にする必要がない」「批判する人は売国奴ではないか」などの見方から、参拝を歓迎する声が相次いでいる。
9月18日には、中国・深の日本人学校に通う児童が、刃物を持った男に襲われ、その後死亡する事件が起きた。これに対し、高市氏はXで哀悼の意を示すとともに、中国政府に邦人保護の「具体的な対策」を示すよう要求した。
さらに同じ投稿では、「運用基準が曖昧な『反スパイ法』についても同様です。拘束されている日本人の早期解放を求めます」などと主張した。
こうした一連の姿勢には、支持者から「こういう人に首相になってほしい」「高市氏でないと中国に立ち向かえない」といった声が出ている。
「先鋭化する投稿」の功罪
このように、熱烈な支持者が存在していることが、高市氏と他候補が異なるポイントと言えるだろう。
思えば、かねてから日本のネット世論と、保守思想の親和性は高かった。加えて、キッパリと断言するタイプの政治家と、短文・短尺動画が好まれるSNSは相性がいい。
SNSでは、アルゴリズムによって「見たいもの」が優先的に表示されることから、支持者のタイムラインは、その話題で一色となる。
そして、「有権者全体が注目している(と思っているが、あくまで近い属性でしかないことが多い)」と感じ、さらに先鋭化していくのだ。
先鋭化が進むほど、支持者間の結束は固まる。しかしながら、行きすぎた結束は、攻撃性を帯びかねない。実際に支持者からは、リベラル系の政策を掲げる他候補を名指しして、「国益を損ねる」などと批判する投稿も多々見られる。
だが、「他者を下げることで、自陣を上げる」ことは、ときに戦略として優位に働くが、裏金問題に揺れる自民党が「挙党一致」を目指している今のタイミングでは、あまり得策ではないようにも感じる。
とはいえ、こうした「応援団」の存在が、高市氏のネット上での露出を増やしていることは間違いない。
Xのトレンドに関連ワードが連日入ることで、一般的な認知度は高まる。多くの一般ユーザーは、興味のないトレンドを見ても、わざわざクリックやタップはしない。しかし、だからこそ「最近よく高市さんの名前を見るなあ」と、無党派層の間にも、無意識のうちに刷り込まれていくのだろう。
【プロフィール】城戸 譲(きど・ゆずる)ネットメディア研究家 コラムニスト1988年生まれ。2013年ジェイ・キャスト入社後、Jタウンネット編集長、J-CASTニュース副編集長などを経て、22年に独立。東京都杉並区出身で、23年の同区議選に落選。「炎上ウォッチャー」としての執筆をメインに、政治経済からエンタメまで、幅広くネットウォッチしている。

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