同性同士の婚姻を認めない現行制度の憲法適合性が争われている同性婚訴訟で、高裁として2例目となった30日の東京高裁判決は、人生の伴侶と定めた相手と男女間なら婚姻できるのに、同性間だと婚姻できない「区別」に合理的根拠があるかをつぶさに検討した。違憲判断のポイントとなったのは、婚姻制度の目的をどう捉えるかだった。
国側は日本の婚姻制度について「子どもを産み育てながら、共同生活を送る関係に法的保護を与える」と説明してきた。
平等原則を定める憲法14条に反しているとされるには「区別」にとどまらず、「合理性がない区別」とまで言えるかどうかが目安になるとされる。これまでの同種訴訟でも、国の主張する婚姻目的に一定の合理性を認め、合憲判断が示されたこともあった。
しかし、東京高裁判決は、日本で婚姻制度が整備された当初から、生殖能力や子どもを産む意思が婚姻の要件とされていなかったと指摘した。
婚姻制度は歴史的に、男女が子をもうけて育て、次世代につなげる機能があるとは認めつつも、配偶者と法的な関係を築くことで、共同生活の安定と人生の充実を得るという意義があるとした。
とすれば、人生の伴侶として定めた相手と永続的な関係を結ぶことは、男女間であろうと、同性間であろうと等しく重要な利益があるということになる。東京高裁判決は、こうして男女間と同性間の「区別」は合理的根拠を欠くと結論付けた。
初の控訴審判決となった札幌高裁判決も「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立する」と規定している憲法24条1項について「(婚姻とは)人と人との自由な結びつき」と解釈して違憲判断を導いている。30日の東京高裁判決は、24条1項について憲法判断を示さなかったが、婚姻制度の意義をどう捉えるかが今後もカギとなる可能性がある。
同種訴訟は今後、福岡高裁で12月13日に判決が予定されている。各地で順次判断が出され、最高裁が数年以内に統一判断を示すとみられるが、経験豊富なベテラン民事裁判官が多く集まる東京高裁の判断には司法関係者も注目していたとみられ、後続の裁判にも影響を与えそうだ。
千葉大の白水隆准教授(憲法)は「性的指向に基づく法的な差別的取り扱いを正面から認めた点で納得感があり、意義深い」と指摘した。
東京高裁判決は、同性カップルに法的保護を与える制度のあり方は国会の裁量に委ねられているとしながら、裁量があることが不利益の解消に動かない根拠にはならないとも述べた。この点、白水准教授は「国会にくぎを刺した形だ。今後も違憲判断が続くのではないか」と分析した。【菅野蘭】