6日朝、札幌市内の河川敷に現れた道警の捜査員。調べているのは、ここから数km離れた江別市の公園で、男子大学生が暴行され死亡した事件。容疑者らの供述に基づき、被害者の遺留品を捜索していた。
先月26日午前6時すぎ、江別市の公園で全裸の男性が倒れているのが見つかった。顔や上半身を中心に数多くのあざがあり、搬送先の病院で死亡を確認。死因は激しい暴行を受けたことによる外傷性ショックで、男性は千歳市の大学生・長谷知哉さん(20)と判明した。
「知っている人かもしれない」。
夕方になって警察に通報してきたのは、長谷さんと交際していた大学生・八木原亜麻容疑者(20)。2日後には八木原容疑者の友人・川村葉音容疑者(20)と17歳と18歳の少年2人が出頭。さらに次の日には、別の少年2人も出頭した。これまでに6人の男女が逮捕され、傷害致死の疑いで送検されている。
八木原容疑者と川村容疑者は、ともに釧路市の出身で中学生からの友人。進学した大学は別だが、いずれも江別市内で、アルバイト先も同じ。夏休みには、一緒に旅行するほどの仲だったという。
2人を知る友人はー。
「(八木原容疑者は)はっきりと物事をいうタイプ。けんかをしたら『お前がやれよ』とか口調が激しくなる。川村さんはすぐに物にあたったり、親のことですぐもめたり、親に何か言われたらすぐむかついちゃって。暴力じゃないけれど、八つ当たりや嘘をついたりもしていた」。
一方、被害者の長谷さんはー。
友人:「真面目な子でした。20歳になった人たちと飲んだ時があったが『酒飲まないの?』と聞くと、『まだ20歳になってないから』と言って断った」。
長谷さんが中学2年生の時に、卒業する1つ上の先輩に送ったメッセージが残っている。
「御卒業おめでとうございます。巣立っていくのは寂しいものですが『新たな出会い』でもあります。これからも頑張ってください」。
先輩の女性:「周りにもすごく優しく接して、みんなと一緒に遊んだり明るい子だった」。
実は、長谷さんも、八木原容疑者と川村容疑者と同じ釧路市の出身。八木原容疑者とは同じ中学校の合唱部で、長谷さんが1年先輩だった。大学生になって再会したきっかけは、八木原容疑者からのメッセージだったという。
長谷さんの友人:「八木原容疑者からLINEが来てという感じで言っていたと思う。「最近、新しく彼女ができてうれしそうに話していた。(彼女ができたのは)8月とかって言っていました」。
交際について、うれしそうに話していたという長谷さん。一体、2人の間に何があったのか?
「1年後に別れることを切り出され、その相談のために会った」。
大学3年生の長谷さんは、道外の会社に就職することを考えていたとみられ、警察は別れ話が事件の発端になったとみて調べを進めている。
事件発覚の前日、先月25日夜、長谷さんは自宅近くのJR千歳駅から電車に乗り、八木原容疑者の自宅の最寄り大麻駅まで移動。午後10時ごろに、近くを歩く長谷さんの姿が確認されている。その後、長谷さんは大麻駅からほど近い、八木原容疑者のアルバイト先へ。仕事終わりの八木原容疑者と合流すると、2人で八木原容疑者の自宅に向かった。捜査関係者によると、この時から八木原容疑者は川村容疑者とスマホで通話し続けていたという。
そして、午後11時前後、長谷さんと八木原容疑者は、事件現場となった公園へ。川村容疑者も当時一緒にいた少年らと自家用車で公園に向かい、2人と合流。その後、長谷さんに集団で暴行したとみられている。
その後の取材で、新たに分かったことがー。
中川宙大記者:「暴行を始めた後、八木原容疑者と川村容疑者は一度グループを抜け出し、長谷さんのクレジットカーを使い江別市内のコンビニで買い物をしていたことが分かりました」。
少なくとも、この時間、少年ら4人と長谷さんだけが公園にいたことになる。
なぜ、死に至るほどの暴行にエスカレートしたのか?翌26日の午前3時半ごろには、現場からおよそ1km離れた国道12号を札幌方向へ走る、川村容疑者のものとみられる軽乗用車を防犯カメラが捉えていた。車には八木原容疑者を除く5人が乗っていたとみられ、長谷さんは、この4時間半の間に暴行を受けたとみられている。
証拠隠滅を図ったのだろうか?先月29日には、札幌市内の川から長谷さんの物とみられるリュックや服も発見されている。
そもそも、容疑者の男女6人はどのような関係だったのか?長谷さんと交際していた八木原容疑者と川村容疑者は中学生からの友人関係でアルバイト先も同じだった。17歳の少年は川村容疑の交際相手で、2人と同じアルバイト先で働いていた。川村容疑者と17歳の少年は、事件の前から長谷さんと面識があったが、他の3人の少年らと長谷さんの接点は分かっていない。
八木原容疑者を除く川村容疑者ら5人は、先月26日午前、長谷さんのキャッシュカードを使い、札幌市内のATMで現金十数万円を引き出した疑いも浮上している。暗証番号を、暴行中に聞き出した可能性もある。
6人の容疑は傷害致死。有罪となれば3年以上の懲役だが、仮に強盗致死となれば、量刑は死刑または無期懲役となる。(※18歳未満は最大で無期懲役)
問題は、いつの時点でカードを奪う意思があったのか。元検察官で刑事事件に詳しい弁護士は、暴行の最中であっても金品を奪う意思があれば、強盗致死罪に問われる可能性があると指摘する。
中村浩士弁護士:「金品を奪うという目的があるかどうか、その目的が生じた後に暴行を加えたかどうか。自ら暴行を加えていなくても、金品目的での暴行を認識して良しとしたかどうか、その辺りで強盗致死の成否が問われる。そういったところの供述がどう得られるか。事前の計画の有無・内容などをLINE等、携帯電話の解析も進められていると思うが、物証の裏付けをもって、それぞれの内心をどうやって立証できるか。ここが大きな捜査のポイントになる」。