厚生労働省が24日に自民党に提示した年金改革関連法案は保険料負担の増加にも踏み込む内容で、自民議員からは慎重意見が相次いだ。夏の参院選への影響に対する懸念が強いためだが、大型選挙前は与野党問わず負担増の議論に及び腰になる傾向があり、法案の成否は少数与党下の「熟議」の国会の試金石となりそうだ。
「もっと慎重に考えるべきだ」「大きな方向性としては理解できるが、まだまだ議論の余地がある」
自民の社会保障制度調査会などの合同会議で厚労省が法案の概要を示すと、出席議員からはこうした意見が続々と出された。
大半は、厚生年金の適用対象をパートら短時間労働者に拡大することに対し、保険料を折半で負担する中小企業などへの配慮を求める声だった。党年金委員会の小林鷹之事務局長は会議後、「きょうの案では党の理解を得ることは難しい」と述べ、月内に再び会議を開く意向を示した。
自民が神経質になっているのは、夏に参院選を控えているためだ。今回の法案は、働く人が将来受け取れる年金を増やす狙いがあるものの、短期的には負担増や手取りが減るといったマイナス面も抱える。法案審議は参院選に近い6月頃まで続くとみられ、自民参院議員の一人は「『政治とカネ』の問題に加えて年金の負担増となれば、選挙結果にも影響する」と危惧する。厚労省は、与党の理解を得ながら慎重に法案の中身を決める考えだ。
立憲民主党など野党も法案の内容を注視している。年金改革で老後の備えを手厚くすることについては野党も必要性を認めており、立民内では「民主党時代に主張してきた内容と重なる」(ベテラン)と政府案に理解を示す声もある。
もっとも、国民の関心が高い年金などの社会保障は、野党にとって政府批判の格好の材料でもある。24日に行われた石破首相(自民総裁)の施政方針演説では、高額療養費制度の見直しに言及した箇所で野党席から一斉にヤジが飛んだ。同制度の見直しは自己負担上限額の引き上げが想定されているためで、野党の批判的な姿勢が鮮明になった。
与党だけでは法案を成立させられない中、首相も立民の野田代表も「熟議」の国会を掲げている。自民幹部は、「幅広い賛成を得るための法案修正の可能性もあり、与野党ともに責任ある議論が求められている」と指摘する。