取り調べ同様に録音すべきか… 刑事裁判のグレーゾーン「証人テスト」に日弁連が照準

検察当局による不適切な取り調べの問題がクローズアップされる中、刑事裁判の証人尋問に際し担当検事が証人と事前に打ち合わせをする「証人テスト」の不透明さを指摘する声が上がっている。手続き自体は刑事訴訟規則に基づく正当なものだが、弁護士会側は「公判での証言を検察の都合のいい方向に誘導するため、密室で行われるリハーサルだ」と批判。これまで取り上げられることは少なかっただけに、検察側の対応が注目される。
広島の買収事件で…
「証人テストを十数回もしていたというのは、考えられないことだ」
2月19日、東京・霞が関の弁護士会館で開かれた日本弁護士連合会(日弁連)の記者会見。日弁連事務次長の妹尾孝之弁護士は、令和元年の参院選広島選挙区の買収事件に絡んで行われた証人テストについて、こう憤った。
事件を巡っては、河井克行元法相から現金を受け取った元広島市議を取り調べた東京地検特捜部の検事が、取り調べの中で不起訴を示唆して供述を誘導した疑惑が浮上。
元市議は元法相の公判に証人として出廷したが、取り調べ検事とは別の検事から証人テストを計12回受けており、その際、取り調べで不起訴を示唆されたわけではないと発言するよう、検事から促されたとも訴えた。
最高検は令和5年12月、特捜部検事の取り調べが「不適正だった」とする調査結果を公表。ただ証人テストについてはやり取りの一部が「公正さに疑念を生じさせるもの」だったとしつつ、全体としては「適正だった」と結論づけていた。
日弁連が記者会見を開いたこの日の朝、畝本直美検事総長は全国の検察幹部を集めた会議で、取り調べの適正化に向けて録音・録画のさらなる推進を指示。
これに対し妹尾氏は会見で「取り調べについては全事件の録音・録画や弁護士の立ち会いなど、これからも適正化に向けた要求を続ける」とした上で、証人テストは録音・録画の対象ではなく今後も「密室」で行われることから、「改善から取り残される恐れがある」との認識を示した。
「ありのままとは異なる」
証人テストは、事実関係の確認などを通じて証人の記憶を呼び起こし、限られた時間内に尋問を適切に実施できるようにするのが目的だ。
元市議側は令和5年、ひそかに録音していた特捜部による任意聴取や、証人テストの音声データを公表。証人テストについては、公判担当検事が「利益誘導、アメとムチのようなことはないですよとしっかり言って」などと発言していたことが明らかになっている。
今回の記者会見に合わせ、日弁連は最高検の調査結果を独自に検証した報告書を公表。「(元市議に対し行ったように)12回にわたり記憶喚起、説得、弁護人から予想される質問の提示、表現などについての指摘を伴う証人テストを実施すれば、証言内容は証人が体験した事実をありのままに証言するものとは異なるものとなる」などと批判している。
過去には国会でも話題に
証人テストを巡っては、広島の買収事件以前にも国会で取り上げられて話題になったことがある。
26年1月には鈴木貴子衆院議員が、22年に宮城県石巻市で発生し裁判員裁判として初めて被告の少年に死刑判決が出された3人殺傷事件を巡り「仙台地検の検事が、証人テストで事実と異なる内容を証言することを指示した疑いがある」と一部で報道されたことについて、質問主意書を提出。
大阪地検特捜部の証拠改竄(かいざん)事件をきっかけに取り調べの録音・録画などの可視化措置が進んだ経緯に触れつつ「証人テストはそうなっていないため、録音・録画の対象とすべきだ」と主張した。
証人テストについては、刑事訴訟法に詳しい学識経験者からも「1~2回程度が適切」との意見もある。広島の買収事件でも、元市議への証人テストは12回に及んでおり、日弁連は今後、さらに検察側への追及を強めていくとみられる。(大島真生)

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