犬を飼う家庭の子どもは口から腸までの消化管に生息するさまざまな「常在菌」の一部が変わり、気持ちが明るくなって社会性の向上に影響している可能性があることが分かった。麻布大や群馬大などの研究チームが子どもの調査とマウスの実験で発見し、23日までに米科学誌アイサイエンスに発表した。
麻布大獣医学部の菊水健史教授によると、犬の常在菌が子どもの口に入るか、子どもの精神面の変化が消化管の環境に影響して、常在菌の構成の一部が変わると考えられる。腸には迷走神経があり、脳に伝わって愛情ホルモンと呼ばれる「オキシトシン」の分泌が促され、社会性が向上する可能性があるという。
犬を飼うと、餌やりや排せつ物の世話、散歩などを通じ、家族や近所の人と触れ合う機会が増える。それだけでなく、腸などの常在菌の変化が社会性に影響する可能性について、菊水教授は「細菌の種を特定し、どの程度の影響があるか明らかにしたい」と話している。
菊水教授や群馬大の宮内栄治准教授らは、東京都内の13~14歳の子を対象とする疫学調査の一環として、犬を飼う家庭の子約100人と飼わない家庭の子約250人から唾液を採取し、含まれる細菌群を無菌状態のマウスに投与した。
犬を飼う家庭の子の細菌群を与えられたマウスは、飼わない家庭の子の細菌群を与えられたマウスに比べ、知らないマウスのにおいをかいだり、狭いチューブに閉じ込められた仲間に接近してにおいをかいだりする行動が多く、社会性が高かった。社会性に関連する細菌群は、大まかな分類ではレンサ球菌属とみられる。 [時事通信社]