「命がけで闘う」。北朝鮮による拉致問題の解決を求めて開催された26日の国民大集会では、被害者家族が改めて強い決意を口にした一方、政府に対しては、ひときわ強い表現で奮起を求める声が続いた。高齢となった親世代が存命なうちの再会実現という命題に向け、焦燥感がにじんだ。
長すぎる膠着状態
「万が一、親世代が他界した後に被害者を帰国させた場合、私たちの静かな怒りは猛烈な抗議になる」。家族会代表で横田めぐみさん(59)=拉致当時(13)=の弟、拓也さん(55)は冒頭のあいさつで、そう語気を強めた。
拓也さんは講演や政府関係者との面会などの場面で、家族を奪われた怒りや悲しみをそのまま吐き出すことはせず、抑制的な物言いに努めてきた経緯がある。周囲への理解や協力を得る上では最適と考えているからだ。
ただ、長すぎる膠着状態の中で、未帰国被害者の親世代で存命なのは、母の早紀江さん(87)と有本恵子さん(63)=同(23)=の父、明弘さん(95)のみになった。
拓也さんはこの日、半年前の前回集会で岸田文雄首相が日朝首脳会談の早期実現に向けて自身直轄の「ハイレベル協議」に言及したことに触れた上で、「しっかりと前進しているだろうか。停滞は許されない」と指摘。「(拉致問題には)タイムリミットがあるということを(日本政府は)北朝鮮に十分理解させることが必要だ」と訴えた。
「しっかり食べられているか」
めぐみさんが拉致されてから、今月15日で46年が経過した。早紀江さんは壇上で、「『早く来て』と言っているような気がする。身代わりになれるのなら代わりになってもいい」と娘への切実な思いを吐露。今年、自宅で倒れて入院し、医師からは救出運動を継続するつもりなら「退院させない」とまで言われたが、「命がけで闘っている」と押し切ったことも明かした。発言後は、会の途中で退席した。
帰国被害者の曽我ひとみさん(64)は、ともに拉致されたまま今も行方が分からない母のミヨシさん(91)=同(46)=について、「12月で92歳になる。しっかり食べられているか。しっかり歩けているか」と案じた。そして、「一日も早く全員が帰国できることを心から願っている。どうか皆さんの力を貸してほしい」と訴えた。(中村翔樹、橘川玲奈)