緊急避妊薬を巡っては望まない妊娠を防ぐ避妊法として、市販化を求める声が根強い。産婦人科医や薬剤師らは試験販売をその前段階として歓迎する一方、避妊に協力しない男性の増加や、性暴力に悪用されることへの懸念など課題も多い。
28日に試験販売を始めた「OGP薬局荒川店」(東京都荒川区)は、購入希望者の要望に応じて奥のスペースに案内。研修を受けた薬剤師が面談し、販売できると判断した場合は、目の前で1錠服用してもらう。
同店は営業時間前の午前7~9時と終了後は午後11時まで電話対応可能だという。薬剤師の鈴木怜那さんは「薬へのアクセスを改善してほしいと願ってきたので、薬局販売まで来たのは進んだと感じられる。必要な人の手に渡るため、改善点や課題の抽出に取り組みたい」と話した。
緊急避妊薬の試験販売は、平成29年にも厚労省の専門家による検討会で議題に上がったが、悪用の懸念などから見送られた経緯がある。令和3年に再び検討会が開かれ、議論された結果、6年越しに薬局での試験販売に至った。昨年末から今年1月に行ったパブリックコメントでは、約4万6千件の意見のうち約98%が賛成だった。
試験販売では来年3月にかけ、医師の処方箋なしで適正に販売できるか検証し、購入者や薬局、産婦人科医にアンケートを実施。厚労省は結果を踏まえ、市販化に向けた今後の方針を決める。
一方、日本産婦人科医会が令和3年に会員らを対象に行ったアンケートでは、薬局販売への懸念事項として、「コンドーム使用率の低下による性感染症リスクの拡大」「緊急避妊薬服用後の妊娠への対応が遅れる」「避妊に協力しない男性の増加」などの回答がそれぞれ6割近くを占めた。(王美慧)