茨城県は28日、同県東海村の日本原子力発電東海第二原子力発電所(運転停止中)で重大事故が起きた際、放射性物質がどのくらい拡散するかを予測した結果を公表した。東京電力福島第一原発事故後にできた新規制基準で設置が義務づけられた安全対策設備が正常に機能する場合、拡散はほぼ防げると試算。一方、ほとんど全て機能しない場合、半径30キロ圏内で最大約17万人の避難が必要としている。
東海第二原発の30キロ圏には全国最多の約92万人が住む。30キロ圏にかかる14市町村には広域避難計画の策定が義務づけられているが、現在9市町村が未策定だ。
拡散予測は、市町村が避難計画を策定しやすくするとともに、県が策定した避難計画の実効性を高めるため、県が原電に作成を依頼。昨年12月に提出され、専門家らでつくる県の第三者検証委員会が妥当性を検証した上で公表した。
予測では、放射性物質の漏えいを抑えながら原子炉の圧力を下げる「フィルター付きベント(排気)」装置をはじめ、新規制基準で導入された安全対策設備などが機能する場合と、ほぼ全ての設備が機能しない場合の2ケースに大別して影響を試算した。正常に機能するケースでは、即時避難が必要な放射線量(毎時500マイクロ・シーベルト)に達する区域や、継続的に毎時20マイクロ・シーベルト以上となり一時移転が必要になる区域はなかった。
機能しないケースでは、放射性物質が人口の多い南西方向に拡散した場合、避難者は最大約17万人となる。このケースは、県が原電に最悪の事態も含めて想定するよう求めて試算させた。
放射性物質の拡散予測に詳しい名古屋大の山沢弘実教授は「安全対策設備が想定通り機能すれば、一定の拡散は防げると示された。県は予測結果を基に避難計画の具体化・充実化を図るべきだ」と指摘する。