「さらなる増額を認めるつもりはない」──。当初計画から約2倍に膨れ上がった大阪・関西万博の会場建設費をめぐり、岸田首相は国会でそう断言していた。ところが、27日の参院予算委員会で新たな国費負担が判明。物議を醸している。
実は、最大2350億円に上る会場建設費に、日本政府が出展する「日本館」の費用は含まれていない。会場建設費は国と大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担することになっているが、日本館は全て国費で賄われる。
■日本パビリオンに最大360億円
予算委で立憲民主党の辻元議員が日本館の費用について追及すると、西村経産相は「(日本館にかかる)仕上げ、運営、解体の予算をプラスアルファで計上しなければならないと思っていますが、総額として360億円には抑えたい」と表明。会場建設費とは別に最大360億円の国費負担を明らかにした。
万博会場の目玉となる外周2キロの大屋根(リング)でさえ、費用は約350億円である。日本館の展示はさぞ立派かと思いきや、ウリは「日本古来の循環型経済」だ。
西村氏は予算委で「(日本は古来)例えば生ごみをリサイクルし、肥料やエネルギーとして利用してきた」などと説明。「循環型の日本文化も紹介しながら、最新のバイオマスのエネルギー技術やCO2のリサイクル技術などを紹介していく」と意義を強調したが、イマイチ目新しさに欠ける。
税金を「お預かりしている」感覚が欠如
岸田氏は国費負担について「合理化の努力を続ける」と繰り返したものの、国費負担は「日本館建設のための費用」のほか、「途上国の出展支援のための費用」に240億円、「会場内の安全確保の万全を期するための費用」に199億円、「全国的な機運醸成」に38億円。しめて837億円に上る。もちろん、会場建設費の2350億円とは別の支出だ。
国費負担は会場建設費もあわせると、計1622億円に膨らむ。経済評論家の斎藤満氏がこう言う。
「本来、政府は国民生活の向上のために所得を再分配し、市場の失敗を補填する役割を担っていますが、いまの政府・与党には国民の税金を『お預かりしている』という感覚が欠如しています。時代錯誤の万博に多額の国費を投入して、日本経済の成長にどれほどのインパクトがあるのか。国民が求めていないのに強引に進めるとは、権力乱用以外の何物でもありません。負担を強いられる国民からしてみれば、こんな乱暴な話はない。内閣支持率が落ちて当然です」
いくら立派なパビリオンを建てても、万博閉幕後は更地に戻る。政府のムダ遣いこそ、国民生活を脅かす要因だ。