京アニ被告人質問詳報 (17)「いずれちゃんと答える。それではだめか」打ち合わせ後に態度一変

《36人が死亡し、32人が重軽傷を負った令和元年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判は27日、量刑に関する審理が始まり、その一環として再び被告人質問が行われた。冒頭では「後悔が山ほど残る」と述べる一方、途中からは弁護人の方針を受け、「回答を差し控える」と連呼した》
弁護人「前半の裁判を終えて、思ったことがあれば」
被告「被害者の一人一人が顔や性格、生活がある生きている人。今でも病院で苦しんでいる人もいるし、子供もいるのに亡くなった人もいることを痛感した」
弁護人「事件について思うことは」
被告「あまりにも浅はかだった。後悔が山ほど残る事件になった」
《尋問は検察側に移る》
検察官「何を後悔している」
被告「ほかに方法がなかったのかと」
《事件に関して、弁護人から提示された証拠は全て一通り目を通したと説明する被告》
検察官「どこまでのことを起こしたか知りたいという気持ちは」
被告「正直に言えば、精神的苦痛を伴うものなので、現実として受け止められず、逃げている気持ちはある」
検察官「事件で亡くなった方は何名か」
被告「36名」
検察官「殺人未遂の被害者は」
被告「おそらく34名」
検察官「一人一人がどのような亡くなり方をしたのか、記憶に残っていることは」
被告「そこまで記憶力がいいわけじゃないので、全部は名前が出てきません」
検察官「事件の起きた年月日は」
被告「令和元年7月19日と思います」
《実際に事件が起きたのは7月18日》
検察官「(事件発生日がくると)何かしていることは」
被告「やはり事件を思い出すことがあります」
検察官「(被告人質問では)質問に対して何らかの答えをしている」
被告「聞かれたことに答えるのは、やはり自分の義務、責務ではないかと思っている」
《検察官は、青葉被告が精神鑑定を実施した医師に対し、「極刑以外ありえない。(裁判を)早く終わらせたい」と発言したことを取り上げる》
検察官「今はどう思うか」
《ここで弁護人が立ち上がる。今後、遺族らの意見陳述を聞くことで「心境が変わる可能性がある」とし、現時点で回答を求めるのは適切ではないと訴える。
裁判長は弁護側の異議を棄却するが、弁護人が証言台まで近寄って「打ち合わせ」をした結果、被告の態度は一転する》
被告「今の時点では差し控えさせていただきます。後で答えさせていただくので、ご容赦いただけないでしょうか」
《被害者参加制度を利用した遺族らも質問する。まずは、犠牲になった寺脇(池田)晶子さん=当時(44)=の夫が尋問するが被告の態度は変わらない》
被害者夫「『涼宮(すずみや)ハルヒの憂鬱(ゆううつ)』は今でも好きですか」
被告「気持ちに応えさせていただきたいのですが、答えるのは差し控えたいと思います」
被害者夫「京アニの作品を見て感銘を受けて小説を書き始めたんですね」
被告「そうでございますが、これ以上の答えというのは差し控えさせていただきたいと思います」
被害者夫「(京アニへ)少しでも感謝を感じる時期はありましたか」
被告「後ほど答えますので、今は差し控えさせていただきたい」
《弁護人は「同じことの繰り返しになる」と異議を唱える。別の被害者の代理人弁護士が質問するが同じ状況が続く》
被害者代理人「先ほど『質問に答えることが責務』と述べていた」
弁護人「答えないと言っているのではなく、いずれ答えると言っている」
被害者代理人「被害者や被害者遺族の方は、今日の質問を踏まえて(自分の)心情を述べたいと言っております。今答えていただけないでしょうか」
弁護人「重複です。答えないことを悪いことと言っているようだ。裁判長から黙秘権について説明があったじゃないですか。裁判長、指揮していただきたい」
《裁判長は質問を変えるよう指示する》
被害者代理人「今考えていることを答えてくれますか」
被告「弁護人の方針と言われております。これに関しては、いずれちゃんと答えますので。今に関しては差し控えさせていただきたいと思います。それではだめでしょうか」
被害者代理人「答えないという方針に変えたのはなぜ」
弁護人「異議あり。再三答えないと言っているので重複です」
裁判長「異議を認めます」
被害者代理人「では終わります」
《被告人質問は終了し、遺族が心境を語った調書の読み上げが続いた》

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