製薬会社の「要注意工場」、国と自治体が抜き打ち検査し監視強化へ…立ち入り先は公表せず

後発薬メーカーなどによる相次ぐ品質不正問題を受け、厚生労働省は、製薬会社の製造拠点のうち、品質管理に問題を抱えている可能性が高い「要注意工場」を選び出し、重点的な検査に乗り出す。国と都道府県が連携して抜き打ちで実施する。2023年度中に導入する方針だ。従来の検査では長年にわたり品質不正を見逃していたケースがあったため、監視体制を強化する。
厚労省によると、要注意工場は、▽製造する医薬品の品目数の多さ▽製造工程の複雑さ▽過去の調査で問題が見つかったことがあるか▽品質管理に懸念を生じさせる情報の有無――などから抽出する。特殊な製造技術の使用、生産能力と比べ従業員数が少ない、不正が発覚した場合の影響の大きさなども考慮する。
あらかじめ重点的に調べる項目を整理し、検査の実効性を高める。要注意工場としてどこに検査に入ったかは公表しない。
製薬会社の工場は今年7月時点で、国内に133か所ある。都道府県や国は医薬品医療機器法(薬機法)に基づき、1~3年ごとに、定期的な立ち入り検査を実施している。製薬会社へ事前に通告しない抜き打ち検査も行っている。
しかし、後発薬メーカーなどでは20年以降、不祥事が相次ぎ、業務停止などで薬の供給不足を招くとともに、製造現場のずさんな実態が明らかになっている。
長年にわたり発覚を免れる悪質なケースも起きている。爪水虫などの治療薬に睡眠導入剤が混入していた小林化工(福井県)では、虚偽の製造記録を記した帳簿(二重帳簿)を作成していたため、福井県は不正を見抜けなかった。
今年10月には、沢井製薬(大阪市)の九州工場(福岡県)で8年前から、品質試験を不正な手順で行い、国の基準をクリアしたように見せかけていたことが発覚した。製薬会社の品質管理に対する意識の低さが問題視されている。
厚労省の担当者は「現在の検査体制では十分に対応できていない。巧妙な違反行為にも対応できるようにしたい」としている。

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