オスプレイ飛行 米は「安全上の懸念ない」 停止の日本は安全性優先

鹿児島県・屋久島沖で11月29日に米空軍の輸送機CV22オスプレイが墜落した事故を巡り、オスプレイの「リスク」に関する日米の考え方の違いが表面化している。陸上自衛隊が事故機とは別型のV22の飛行を停止したのに対して、米軍は事故機の同型機も含めて「安全性に懸念はない」と判断。事故の当事者ではない日本側の方が慎重な対応をとっている。
今回の墜落事故に関して、事故機が所属する第21特殊作戦中隊の上部組織である米空軍特殊作戦司令部は1日、「飛行停止が必要かどうかを判断するための情報が十分にない。(事故前から)引き続き、CV22の搭乗員や保守整備チームを信頼している」と説明した。第21中隊所属のCV22は事故後に飛行を停止しているが、同司令部は「CV22の飛行隊に安全上の懸念はない。捜索・救助活動が進行中のため、飛行を停止している」と述べた。
同司令部の説明からは、「事故があっても直ちに飛行を停止する必要はなく、安全上の懸念も現時点では出ていない」という考え方がうかがえる。
同司令部は2022年、CV22でクラッチの不具合に関する事故が相次いだため、約2週間にわたって飛行を停止したことがある。しかし、今回の事故に関しては、こうした判断をするだけの「根拠」がまだないという立場だ。
一方、陸自は事故直後、V22の飛行停止を決めた。CV22とV22を比べると、特殊作戦を担うCV22の方が過酷な環境下で困難な任務につくため事故のリスクは高いが、基本的な機体構造や飛行形態は共通する。陸自は「オスプレイに共通する問題が今回の事故につながった」という結論に至る可能性に備え、安全を優先した形だ。
事故後の日米の対応には、オスプレイの「リスク」に対するこのような考え方の違いが反映され、日本国内で飛行する米軍のオスプレイを巡って摩擦を生んでいる。
日本政府は自国の安全に関わる問題だけに、自衛隊機と同様に「まずは安全確認を」と米軍に飛行停止を求めた。しかし、米軍は「飛行停止を判断する根拠がない」と考え、海兵隊のMV22や海軍のCMV22といった別型機の飛行を続行。空軍のCV22に関しても「安全上の問題はない」との立場だ。
米国防総省や空軍は1日、事故後も飛行を続ける別型機について「徹底した保守整備と安全点検を経たうえで飛行している」と説明した。「安全を確認してから飛行するよう要請した」とする日本政府と整合性を取った説明だが、日本側が求めたとする「飛行停止」とは一線を画した。【ワシントン秋山信一】

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