熊本市南区の熊本中央病院が、自動運転機能を備えた電動車いすを導入した。足腰が不自由で院内の移動が難しい患者向けのサービスで、病院スタッフの介助の負担軽減も図る。九州での導入は初めてという。那須二郎院長は「負担が軽減した分を医療ケアの向上につなげたい」と期待を込めた。(小波津晴香)
付属のタッチパネルで行き先を選ぶと、車いすがゆっくりと動き出した。病院で11月6日に導入され、2人が試乗した。2階にある外来受付から出発し、速さは時速2キロほど。備え付けた四つのセンサーが通行人らを感知すると、自動で減速する。ぶつかりそうになって一時停止すると、「道をおゆずりください」と自動音声が流れた。
目的地に着くと、自動で乗車地点まで戻っていった。介護経験がある熊本市の女性(71)は、エスカレーター前まで約70メートルを体験走行し、「病院で迷うこともあり、不便に思っていた。とても助かる」と笑顔で話した。
製品は、電動車いすの製造会社「WHILL(ウィル)」(東京)が開発した。2020年に羽田空港で初めて実用化され、成田、関西国際空港などで利用されている。医療機関への導入は熊本中央病院が全国で3例目という。年齢制限はなく、運転免許がなくても利用できる。
9月に行った実証実験では、試乗した62人のうち、53人が満点の5点を付けた。「作りがしっかりしていて安心」「体がふらつくのであって良かった」との声があった。
同病院では2台を導入し、エスカレーター前と、外来受付前に1台ずつ配置した。今後の運用実績をみながら、追加導入や運用エリアの拡大、エレベーター移動にも対応する入院患者向けのサービスの提供などを検討するという。