激変する世界のメディア=日本の発信力は大丈夫か?―赤阪清隆元国連事務次長

日本のみならず世界のメディアの状況は目下、息をもつかせぬほどの速さで変化している。「十年ひと昔」どころではなく、今や1、2年もたてば新しい事象が生じて、昔の常識が通用しなくなってしまう。例えば、チャットGPTなど、出現してからまだ1年ほどしかたっていないのに、世界中にあっという間に広がった。この慌ただしい変化についていくのは、若者でもない限り、なかなか大変である。彼らの現下の行動パターンを見る限り、これからのメディア界はインターネットとフェイスブックなどのSNSが主役を務めるのは明らかであろう。新聞の世界には、たいへんな変化が起きている。大学などで学生相手に質問してみればわかるが、日本の若者は、最近ほとんど新聞を読まなくなった。何でもかんでも、スマホで済ませている。総務省が2020年に発表した調査結果では、10代から50代までインターネットを利用する人が8割超に上るのに対し、新聞利用率は、20代以下では3%以下、30代でも約6%でしかない。2023年夏に新聞通信調査会が実施したメディアに関する全国調査では、ニュースを読んだり、見聞きする率が一番高いのは「民放テレビ」で、続いて「インターネット」「NHKテレビ」「新聞」「ラジオニュース」の順になっている。海外、特に米国でも、紙の新聞の購読者数の凋落が激しい。新聞通信調査会が2022年末に実施した調査によれば、米国、中国はインターネットからのニュースの入手が一番で、タイではSNS(フェイスブックなど)、英、仏、韓国はテレビが第1位だ。米、中、韓、タイでは、新聞はインターネット、SNS、テレビの後塵を拝した。英国の関係者によれば、英国人は日本の政治経済情勢よりも伝統的な文化、歴史、ポップカルチャー、食文化などへの関心の方が高い。そして、それらの情報源は主にインターネットの趣である。特に若者は、主としてインスタグラム、ティックトック、リンクトインなどのSNSを活用して情報を得ているという。ロンドンのジャパンハウスでは、壁一面に映された動画が日本のマンガやアニメなどを紹介している。若者は動画でマンガ、アニメ、ゲームなどから日本に関心を芽生えさせ、それからさまざまな日本文化や伝統芸術に関心を広げていく模様である。日本から英語で対外発信をするメディアとしては、NHKワールドや時事通信、共同通信、ジャパン・タイムズ紙など、数多くの媒体が存在する。しかし、欧米の主要メディアに比べると、まだ残念ながら世界への影響力は弱い。日本がバブル経済に沸騰していた1980年代は、世界の人々の目が当然のように日本に向いた。あれから30年以上が過ぎて、もはやそのような状況にはない。日本自身が海外向けの情報発信に相当の努力をしない限り、日本への関心は減り続け、日本の国際的なプレゼンスや影響力が一段と低下する危険性がある。

日本のみならず世界のメディアの状況は目下、息をもつかせぬほどの速さで変化している。「十年ひと昔」どころではなく、今や1、2年もたてば新しい事象が生じて、昔の常識が通用しなくなってしまう。例えば、チャットGPTなど、出現してからまだ1年ほどしかたっていないのに、世界中にあっという間に広がった。この慌ただしい変化についていくのは、若者でもない限り、なかなか大変である。彼らの現下の行動パターンを見る限り、これからのメディア界はインターネットとフェイスブックなどのSNSが主役を務めるのは明らかであろう。

新聞の世界には、たいへんな変化が起きている。大学などで学生相手に質問してみればわかるが、日本の若者は、最近ほとんど新聞を読まなくなった。何でもかんでも、スマホで済ませている。総務省が2020年に発表した調査結果では、10代から50代までインターネットを利用する人が8割超に上るのに対し、新聞利用率は、20代以下では3%以下、30代でも約6%でしかない。2023年夏に新聞通信調査会が実施したメディアに関する全国調査では、ニュースを読んだり、見聞きする率が一番高いのは「民放テレビ」で、続いて「インターネット」「NHKテレビ」「新聞」「ラジオニュース」の順になっている。

海外、特に米国でも、紙の新聞の購読者数の凋落が激しい。新聞通信調査会が2022年末に実施した調査によれば、米国、中国はインターネットからのニュースの入手が一番で、タイではSNS(フェイスブックなど)、英、仏、韓国はテレビが第1位だ。米、中、韓、タイでは、新聞はインターネット、SNS、テレビの後塵を拝した。

英国の関係者によれば、英国人は日本の政治経済情勢よりも伝統的な文化、歴史、ポップカルチャー、食文化などへの関心の方が高い。そして、それらの情報源は主にインターネットの趣である。特に若者は、主としてインスタグラム、ティックトック、リンクトインなどのSNSを活用して情報を得ているという。ロンドンのジャパンハウスでは、壁一面に映された動画が日本のマンガやアニメなどを紹介している。若者は動画でマンガ、アニメ、ゲームなどから日本に関心を芽生えさせ、それからさまざまな日本文化や伝統芸術に関心を広げていく模様である。

日本から英語で対外発信をするメディアとしては、NHKワールドや時事通信、共同通信、ジャパン・タイムズ紙など、数多くの媒体が存在する。しかし、欧米の主要メディアに比べると、まだ残念ながら世界への影響力は弱い。日本がバブル経済に沸騰していた1980年代は、世界の人々の目が当然のように日本に向いた。あれから30年以上が過ぎて、もはやそのような状況にはない。日本自身が海外向けの情報発信に相当の努力をしない限り、日本への関心は減り続け、日本の国際的なプレゼンスや影響力が一段と低下する危険性がある。

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