名古屋市中区のブランド品買取店「おたからや名古屋栄店」の店長、阿部光一さん(42)死体遺棄事件で愛知県警に逮捕された同店元従業員、内田明日香容疑者(29)の偽装工作の詳細や、犯行の動機が徐々に明らかになってきた。失踪直前まで阿部さんと連絡を取り合っていた常連客の機転で内田容疑者の塗り重ねてきたウソがボロボロと剥がれ落ち、「ホスト狂いの元キャバ嬢」という彼女の実像も浮かび上がってきた。常連客A氏の証言を続ける。
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「阿部さん、絶対帰ってこないですよ」と断言
阿部さんと信頼関係の厚かった常連客で、友人でもあるA氏が絶対匿名を条件に、集英社オンラインの取材に応じた。A氏は阿部さんの生前、「おたからや」に1500万円分のインゴット(金塊)などを持ち込み、代金は後日支払われる予定だった。
だが約束の最中、阿部さんと連絡がとれなくなり、突如阿部さんの「知人」として登場したのが内田容疑者だったという。A氏が実際に内田容疑者と対面したときの様子を語った。「直接会ったのは3回かな。初めて会ったときは普通で、堂々としてましたよ。最後は阿部さんのお店で一回会ったんだけど、そのときは『阿部さんがうつ病を発症したからもう店を閉める。それで店の後片付けを頼まれてる』みたいなことを言い出したんですよ。それで僕も心配になって『阿部さんもう帰ってこないの?』って問いただすと『絶対帰ってこないですよ』と断言したんです。今思えばかなり怖いですよね」
内田容疑者(本人SNSより)
さすがに絶命した阿部さんを自宅に放置し、店に出入りしていただけのことはある。そもそも阿部さんは、A氏から預かったインゴット(金塊)などの代金1500万円を「今日の夜に代金を持っていきます」と9月29日昼の電話で約束したのを最後に音信不通となった。そして突然、内田容疑者が「代行」として現れた。「2回目までは内田はお金を持ってきたんですよ。インゴットの代金として1回目150万円、2回目150万円って感じで。彼女が住んでいるアパートの近くのコンビニで会い、金を受け取りました。それでも足りないから3回目には、僕が預けたインゴットをお店に取りにいくってことで会ったんです」そもそも内田容疑者がAさんに伝えていた、阿部さんがインフルエンザとコロナの合併症で入院、その後退院したにもかかわらず、阿部さんと面会できない理由を、内田容疑者はどう説明していたのだろう。
亡くなった阿部さん(知人提供)
「退院して新栄のマンションに戻って、お姉さんと親戚が一緒に看病してくれていると聞きました。『僕は代金については1年でも2年でも待つから一度会話だけしたい』って言って、もう面倒だから阿部さんの新栄の家に直接行こうとしたんですよ。そしたら『行くのはやめてください、家族のこともあるから。代わりに私が阿部さんの家に行きます、阿部さんが私の携帯から話すっていうのはどうですか?』と持ちかけられました。阿部さんがお姉さんとかに見張られていて中々、携帯にさわれないし、電話も気まずいだろうからって」
「完璧に壊れてますよ」「オンナもホストも終わっとる」
意味不明の理由をこじつけてきた時点で、A氏は作り話と見破った。「阿部さんは携帯ゲームがすごく好きで、常に携帯を右手に持ってるような人なんですよ。だからそれもふまえて『ずっと携帯にさわれないなんておかしいだろ。とりあえず今日は無理だから、月曜日に阿部さんの家に行きます』と伝えました。そんなやり取りしてたら、阿部さんのなりすましLINEから『急遽、父親が倒れて岩手に行くことになった、すまん』みたいなメッセージが来たんですよ。さすがにおかしいんで『お前なんかやったやろ』と内田を問いただすと『本当に私何もわからないんですよ』と口ごもる。そういうくだりが何回も続きました」だが、徐々に追い詰められた内田容疑者は、しだいにボロを出し始めた。「そもそもは阿部さんとの関係は『手伝ってる者です』みたいな感じ言ってましたけど、そんな従業員はこれまで見たことなかったから、『もしかして阿部さんの家に行ったりしてた?』って聞くと『行ってました』と白状したんです。阿部さんからは以前、『自宅に出入りしている女に、保管していた買取品の貴金属や商品券を盗まれて売りさばかれた』と聞いていたので、こいつが盗みをしてた女だなと思いました。もし阿部さんが生きているとすれば、店の鍵やセコムカードとかをその女に預けたってことじゃないですか。盗みをされてるのにそんなことするわけないから、僕は周りに『阿部さん多分、あの女に殺されとるぞ』って言ってたんだけど、誰も取り合ってくれなくて…」
阿部さんが住んでいたマンション(撮影/集英社オンライン)
阿部さんと内田容疑者の最初の接点はキャバクラだったようだ。8年ほど前、結婚を機にいったんキャバ嬢を「引退」した内田容疑者が、栄あたりで特定のキャバクラには所属せずに体験入店を繰り返していたころ阿部さんと知り合ったという。「阿部さんは内田のことを『ただの嘘つきだ』とも言ってました。カネの使い道を阿部さんが聞くと『お母さんに渡した』と言い、母親を名乗る女性から電話があったので『お母さんは何に遣ったんですか』と問い詰めると『宗教に寄付した』と言い出したと。だから『あそこの家族ぶっ飛んどる』って阿部さんは愚痴ってました。そもそも電話してきた『母親』というのも本物かどうかあやしい。というのも内田はホストにめちゃくちゃ金を遣ってたんですよ」徐々にめくれてくる正体に気づいたA氏が、ホスト関係者に噂を聞いて問い詰めると、自ら白状したという。「音信不通になったら困るので内田とはあの手この手で連絡を続けてたんです。逮捕される何日か前にも『男(ホスト)が浮気してたんですけど、どう思いますか?』って相談みたいなこともしてくるんですよ。多分気軽に連絡取れるような関係の人がもう全然いなかったんだと思うんだけど、ぶっ飛んでますよね」
元キャバクラ嬢だった内田容疑者(本人SNSより)
その相談内容も聞いて呆れるようなものだったという。「浮気をされたのがいつとは言ってなかったけど、『彼氏がマリオットホテルを取ってくれて私は夕方からチェックインして待ってたんです、だけど全然来なくて連絡しても友達とまだ用事って返ってくるんです、結局来たのが夜の12時くらいなんですよ。それで何をしてたのか問いただしたらキャバ嬢を家に連れてきてゲームをしてて、そのうち野球拳が始まって体の関係になっちゃったって。でも全然エッチはしたくなかったって男は言ってるんですけど、どう思いますか?』みたいな内容でした。完璧に壊れてますよ。その相談に関しては『お前もそいつも終わっとる』と返しました」
今、体調が悪くて寝込んでいて…
A氏は他にも内田容疑者の身の上話を聞いていた。「バツイチとか言ってましたね。だから定期預金を解約するときに旧姓のままだから手続きに時間がかかるからみたいなことを話していたけど、自分の名義だったらそんなに手間がかかるわけないから、『お前、定期なんて組んだことないだろ』と詰めたこともあります」
内田容疑者が住んでいたアパート(撮影/集英社オンライン)
内田容疑者との最後の通話は件の“ホスト騒動”だったが、翌日にはLINEのメッセージが届いたという。「11月22日のお昼2時ぐらいでした。おじいちゃんの生前贈与に絡んで金を返してもらうということでしたから『どうなった?』とLINEすると『金曜日でお願いします。今体調が悪くて寝込んでいて。書類は大丈夫です』と返事が来たんです。この時点でもう(阿部さんの遺体が発見されたとの)報道が出てたんで、そりゃ体調も悪くなるわなって。後日、警察も言ってましたけど、かなりお粗末らしくて、阿部さんのご遺体が発見されてから内田まですぐ辿り着いたらしいんです。僕も報道を見てピンときて、下手に疑われたくないからすぐに警察に連絡したんですよ」
送検される内田容疑者(写真/共同通信社)
大胆だが杜撰。内田容疑者の犯行の手口はそれに尽きる。A氏もこう首をひねる。「阿部さんは、お母さんを今年亡くしているんですけど、そのお母さんとは毎日電話していて、お姉さんともマメに電話でやりとりしていたようです。それまで毎日電話してきた家族が突然、音信普通になるんですから、それは家族も不審に思いますよね。そもそも僕自身、阿部さんとLINEもメールもしたことないんです。基本電話で、どんなときでも生の声で話してくれる人なんですよ。だからLINEが来た時点で疑問だったんです」身勝手な女の大胆な犯行と稚拙な偽装工作。寡黙で生真面目で家族思いだった被害者の冥福を祈るしかない。取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
#1 逮捕された金髪女性従業員(29)の“オトコ”事情「離婚後はキャバクラに出戻り…」死亡したブランド品買取店店長は数千万円横領されていた#2「稼いで出っ歯を直さなきゃ」容疑者は元人気キャバ嬢(29)で被害者店長(42)とかつて交際…横領した2千万円を月々数万円返済か#3「商品は私が全部売っちゃいました」「倍の3000万円にして返します」店長になりすまして金を使い込み、品物を捌いていた元キャバ嬢(29)の杜撰な手口…遺棄された店主は生前「大金がはいってくる」
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