パーティー券裏金疑惑で揺れる自民党の派閥から、ついに脱会者が出た。桜田義孝元五輪相が5日、所属する二階派に退会届を提出していたことを明らかにしたのだ。今後は無派閥で議員活動をしていくという。
退会届の提出は11月22日だというが、その頃には、派閥パーティーに関する刑事告発を受けた検察の捜査が動き出しており、裏金事件も影響したとみられる。
桜田氏本人が退会理由としたのは、派閥のパー券販売ノルマが厳しいということ。「私の場合は300枚。売るのが大変だった」とこぼした。パー券は1枚2万円。桜田氏のノルマは600万円だったことになる。
「二階派の閣僚経験者のノルマは700万円程度とされ、400万~500万円の安倍派よりもキツい。ただでさえ非主流派の二階派に裏金疑惑が噴出し、これ以上、派閥に籍を置いてもメリットがないと判断したのだろう。議員が派閥に所属する目的は、ポストとカネと選挙。閣僚経験者の桜田さんは、もう大臣に抜擢されることもないしね」(政界関係者)
パー券のノルマは、閣僚経験や当選回数が多いほど負担が大きい。桜田氏は当選8回だが、ベテランの多い二階派には、閣僚経験のある当選7回以上の議員が10人近くいる。桜田氏に続く脱会者が出る可能性もあるだろう。安倍派でも、かつて所属した高市経済安保相は、「閣僚経験者の高額なパー券ノルマを嫌って脱会した」(安倍派関係者)という。
安倍派は浮き足立ち、幹部が右往左往
安倍派は裏金疑惑の“本丸”だ。それにもかかわらず、塩谷座長以下、「5人組」の集団指導体制は、誰もが責任逃れに終始し、右往左往。対応が後手後手だ。5日も松野官房長官は会見で「政府としての立場でお答えを差し控える」を連発。事務総長の高木国対委員長も何も語らずだった。
安倍派若手議員のパーティーが昨夜、永田町近くで開かれたが、幹部はほとんど姿を現さず、取材はシャットアウト。安倍派の混乱ぶりがよく分かる。
「幹部連中はどこまで深刻に受け止めているのか。派内は浮足立っている。ずっと総裁派閥だったのでポスト目当ての寄らば大樹で人数が増えたが(現在99人)、派閥のイメージが悪くなれば、この先はポロポロこぼれていくだろう。特に選挙が弱い人は『このまま安倍派にいたら大変』となりかねない」(安倍派関係者)
ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。
「かつて派閥には、会長が総理総裁を目指すという大義がありましたが、それが完全に崩れ、営利集団に変わった。メリットもなくなり、逆に『派閥』と聞くだけで汚いイメージになってきた。2000年代初頭に派閥の弊害が問題視され、無派閥を選ぶ人が増えたことがありました。今回も無派閥が増えるかもしれません。派閥崩壊の第一歩になるのではないか」
石破元幹事長が先週、インターネット番組に出演した際、「法律に違背するなら政治集団なんて解散したらいい」と吠えていたが、菅前首相も含め、無派閥議員はニンマリだろう。