自民党5派閥による政治資金パーティー収入の過少記載問題で、岸田首相が会長を務めていた「宏池会」(岸田派)が、実際に集めたパーティー収入よりも少ない金額を同派の政治資金収支報告書に記載していた疑いがあることが関係者への取材でわかった。東京地検特捜部もこの事実を把握し、所属議員側へのパーティー収入のキックバック(還流)があったかどうかなどを慎重に調べているとみられる。
岸田派の収支報告書には、2018~22年のパーティー収入は総額で約8億4000万円と記載されている。関係者によると、実際には記載金額より多くのパーティー収入があり、収支報告書の収入が過少記載となっている可能性があるという。岸田首相は、「総理・総裁の任にあるうちは、派閥を離れるのが適切な対応だ」として、今月7日付で岸田派を離脱している。
この問題では、「清和政策研究会」(安倍派)と「志帥会」(二階派)で、所属議員側が販売したパーティー券のノルマ超過分が収入として派閥の収支報告書に記載されず、議員側にキックバックされていた疑いが浮上している。
安倍派については、裏金化された疑いのある還流分が直近5年間で計5億円規模に上ることが判明。派閥側の収入と支出を合わせた不記載額は総額で10億円を超える可能性がある。議員側も、キックバックを受けた分を収入に記載していなかったとみられる。
二階派の収支報告書に記載されていなかったパーティー収入は1億円超に上る疑いがあるが、安倍派とは異なり、派閥側の支出と議員側の収入には記載されていたという。今回浮上した岸田派の過少記載額は、安倍派や二階派よりも少額とみられるという。
政治資金規正法違反(不記載、虚偽記入)容疑で捜査している特捜部は、不記載額が多額に上る安倍派を中心に、会計担当職員や秘書らの事情聴取を続けている。13日にも臨時国会が閉会するのに合わせて捜査を本格化させる見通しで、同派事務総長経験者を含め、数十人規模の所属議員への事情聴取を検討しているとみられる。