自民党安倍派が政治資金パーティー収入を還流させて裏金化していた疑惑を巡り、岸田首相(党総裁)は14日、松野博一官房長官(61)ら安倍派の全4閣僚を交代させる。同派の副大臣5人も全員交代の方向だ。6人いる政務官には一律での辞任は求めず、政権からの「安倍派一掃」は見送る。
複数の政府・自民関係者が明らかにした。首相は12日、人事について、「適切なタイミングで、政策に遅滞を生じさせないため、国民の声に応えるため、適切な対応を考えたい」と首相官邸で記者団に語った。
首相は13日、国会閉会に合わせて記者会見を行い、閣僚らの交代方針を表明する予定だ。疑惑が最も深刻な最大派閥・安倍派(99人)の閣僚・副大臣らを退かせ、局面を転換したい考えだが、パーティー収入の過少記載の疑いは岸田派でも明らかになるなど、事態収拾の見通しは立っていない。
交代する閣僚は、還流疑惑がある松野氏と西村康稔経済産業相(61)のほか、鈴木淳司総務相(65)、宮下一郎農相(65)。鈴木、宮下両氏は自らへの還流はなかったと説明しているが、辞任を受け入れる意向を周囲に示している。
安倍派の副大臣は、堀井学内閣府副大臣(51)、堀井巌外務副大臣(58)、青山周平文部科学副大臣(46)、酒井庸行経済産業副大臣(71)、宮沢博行防衛副大臣(48)の5人だ。
首相は5人について、中堅議員で派閥の疑惑を知りうる立場にあり、責任を免れにくいと判断した。若手中心の政務官6人は疑惑への関与の程度に応じた対応が妥当とみて、交代は一部にとどめる考えだ。
首相は党執行部でも、安倍派の萩生田光一政調会長(60)と高木毅国会対策委員長(67)、世耕弘成参院幹事長(61)を交代させる意向だ。