東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件で、5社から総額約2億円の賄賂を受け取ったとして受託収賄罪に問われた組織委員会元理事、高橋治之被告(79)は14日、東京地裁(安永健次裁判長)で開かれた初公判で無罪を主張した。「理事の職務として企業に便宜を図ったことはない。企業から受け取った金銭は民間のコンサル業務の報酬で、あくまでもビジネスだった」と述べた。
起訴状によると、元理事は5社の幹部から依頼され、スポンサー契約や公式商品の販売で企業が有利になるよう便宜を図り、その見返りとして2017年10月~22年3月、計約2億円の賄賂を受け取ったとされる。
検察側は冒頭陳述で、スポンサー契約を巡るやりとりを明らかにした。元理事は、組織委の会長だった森喜朗元首相からスポンサー集めを任せられ、スポンサー契約の締結について組織委内で意見を述べる権限があったと指摘。スポンサーへの参入を目指す贈賄側の企業から依頼され、契約締結の手続きを優先的に進めるよう組織委内で指示をしていたと述べた。
さらに、元理事は自身が法令で公務員に準じた扱いを受ける「みなし公務員」であることを組織委から文書で通知されていたとし、「企業から金銭を受け取れば違法になると認識していた」と主張。自身の関与が発覚しないよう、知人2人の会社を受け皿にして、企業側にコンサル料名目で送金させていたケースもあったとした。
検察側は一連の事件で、元理事を含む収賄側計3人と、紳士服大手「AOKIホールディングス」(横浜市)▽出版大手「KADOKAWA」(東京都千代田区)▽広告会社「大広」(大阪市)▽大手広告会社「ADKホールディングス」(東京都港区)▽玩具会社「サン・アロー」(千代田区)の幹部ら計12人を起訴した。先行した公判では収賄側1人と贈賄側10人に有罪判決が言い渡され、いずれも確定した。【斎藤文太郎】