4月の東京都江東区長選を巡る公職選挙法違反事件で、東京地検特捜部が前副法相の柿沢未途衆院議員(52)=東京15区=に任意の事情聴取を要請したことが関係者への取材で判明した。初当選した木村弥生前区長(58)の票をとりまとめる趣旨で、地元区議らに現金を配布した同法違反(買収)の疑いがあり、特捜部は柿沢氏の説明を聴いた上で立件の可否を判断するとみられる。
特捜部は14日、東京・永田町の衆院第2議員会館にある柿沢氏の事務所や江東区内の自宅を家宅捜索した。柿沢氏は同日、自民党を離党した。
区長選は区議選と同じ日程で投開票された。区長選には自民党元衆院議員の木村氏の他に、自民都連が推薦する元都議も出馬し、「保守分裂」の構図となった。柿沢氏は木村氏を支援していたとされる。
柿沢氏は告示前に、区議選に自民から出馬した5人に対し、一律20万円(計100万円)を渡したことを認めている。ただ、現金の趣旨は区議の選挙を応援する「陣中見舞い」だったと主張。5人のうち2人からは、間もなく全額の返金を受けたと説明している。
柿沢氏は長く野党で活動し、2021年衆院選で自民に移った経緯がある。支援者に宛てた文書では、「元都議の対立候補だった木村氏の票のとりまとめは反党行為に当たる」とし、買収の意図を否定した。
現金を受領したとされる5人のうち4人は当選し、1人は落選した。返金したとされる2人は現職1人と元職1人。返金したとされる現職は当選後に再び20万円を「当選祝い」として受領したとされる。
また、柿沢氏側が木村氏の陣営スタッフら13人に計約90万円の報酬を支払った疑いがあることも判明した。公選法は無登録の運動員に選挙運動の対価として報酬を支払うことを禁じており、特捜部は運動員買収に当たるとみて捜査している模様だ。
一方、柿沢氏の秘書は特捜部に対し、13人の多くは告示前に江東区政に関する街宣活動をしただけで、木村氏の選挙には直接関わっていないと主張。政治活動への対価だとして運動員買収を否定しているという。
柿沢氏側は、木村氏側による選挙期間中の有料ネット広告の掲載にも関与した疑いがある。公選法はこうした行為を禁じており、特捜部は捜査を進めているとみられる。【井口慎太郎、北村秀徳、岩本桜、山田豊】