自民党派閥のパーティー券疑惑をめぐり、東京地検特捜部は、最大派閥・安倍派(清和政策研究会)の所属議員らを任意で事情聴取する調整を始めた。近く政治資金規正法違反(不記載・虚偽記載)の疑いで、関係先などの強制捜査に乗り出す見込みだ。同派には、長年の悪習への反省や後悔とともに、焦りや怒りの感情も鬱積しているという。岸田文雄首相は、閣僚・副大臣から安倍派を一掃したが、他派閥でも同様の疑惑はくすぶっている。安倍派は今後、瓦解(がかい)するのか、反旗を翻すのか。
「調整力、実行力、答弁力などを備えた即戦力」「(安倍派の処遇は)一人一人の意向や事情を勘案した。党全体が一致結束することが重要」
岸田首相は14日、閣僚4人、副大臣5人などの更迭・交代について、記者団にこう語った。「予定通り」とも語ったが、額面通りに受け止める向きは少ない。
ある安倍派議員は「派内で、政治資金の不適切処理があったことは申し訳ない。特捜部の捜査には全面的に協力する。ただ、岸田首相は『事実関係を確認して』と記者会見で繰り返していたのに、キックバック(還流)や裏金化を否定した議員も更迭した。安倍派というだけで排除するのは疑問だ。岸田首相の〝論理〟に従えば、今後、すべての疑惑議員を更迭しないと筋が通らない」と語る。
確かに、神戸学院大学の上脇博之教授は、安倍派と二階派(志帥会)に加え、岸田派(宏池会)、茂木派(平成研究会)、麻生派(志公会)を、政治資金規正法違反容疑で東京地検特捜部に刑事告発している。
岸田首相が先週まで会長を務めていた岸田派でも、政治資金収支報告書への「過少記載」疑惑が浮上している。岸田首相は発覚直前、派閥を突然離脱していた。
安倍派では今回、「5人衆」と呼ばれた有力者に疑惑が直撃した。松野博一前官房長官と西村康稔前経産相は事実上更迭され、高木毅国対委員長と萩生田光一政調会長、世耕弘成参院幹事長が辞表を出した。
最大派閥は、どこに向かうのか。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「安倍派には反省とともに、抑えきれない怒りが鬱積している。来年秋の総裁選までに『反岸田』に転じる可能性がある。ただ、安倍派の看板は当面、選挙で不利だ。閣僚・党幹部のポスト獲得が期待できなければ、離脱者も出るだろう。復活の方策としては、安倍晋三元首相が象徴した保守的思想を軸に、確固としたリーダーが立ち、政策を打ち出す集団として結束する道があるかもしれない」と語った。