東京・歌舞伎町の「トー横」で警視庁が行った一斉補導。これまでに、過剰摂取(オーバードーズ)目的で市販薬を所持していたとみられる若者も見つかっていた。小学生が搬送される事例も起こっており、低年齢化が社会問題となっている。
厚生労働省によると、全国の精神科医療施設で薬物依存の治療を受けた10代の患者の内、主な依存薬物が「市販薬」だった割合は平成28年に25%だったが、令和4年には65%にまで増加した。
ドラッグストアなどでは、一度に大量購入できなくするなど対策をとっているが、万引してトー横で売りさばく若者も現れている。
警視庁少年育成課は11~12月、市販薬を無許可で販売したとして、医薬品医療機器法違反の疑いで10~20代の男女5人を逮捕した。
逮捕された少女(16)は、トー横で知り合った高校1年の女子生徒(16)に市販のせき止め薬を販売。自身もオーバードーズを繰り返し、より効き目の強い処方薬を購入するため、トー横仲間が転売していた金額を参考に、万引などで入手した薬を売っていたという。捜査関係者は「見よう見まねで転売行為が広まっている」と警戒を強める。
なぜ若者の間で急速にオーバードーズが広まったのか。新潟薬科大薬学部の城田起郎(たつろう)助教は、「孤独を抱える若者が生きづらさを乗り越える手段として手を出してしまうケースが多い」と指摘する。嘔吐(おうと)、けいれん、意識消失などの危険性がある一方、依存してやめられない状況にある若者もいるという。
城田氏は、「当事者を適切な支援先につなげることや、学校での低年齢時からの医薬品に関する教育強化が必要だ」としている。