文化審議会は18日、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)無形文化遺産に新たに提案する候補に「書道」を選んだ。政府は関係省庁連絡会議を経て、2024年3月末までにユネスコに提案書を出す。登録の可否は26年11月頃に決まる可能性が高い。
すずりで墨をすり、筆を使って紙に文字を手書きする「書道」は、古来中国の優れた書から影響を受けつつ、平安時代には和歌文化の隆盛とともに日本独特の仮名文字も広まった。漢字、仮名、漢字仮名交じりのそれぞれの書に用いられる筆遣いや技法が発展した。
現代でも正月の書き初めなど、日本人の年中行事や生活文化と深く結びついており、21年には国の登録無形文化財になった。無形文化遺産登録には、保護の措置が講じられていることが必要で、著名な書家らが会派を超えて結成した「日本書道文化協会」(東京都)が担い手となる。
同協会会長で、登録推進活動の先頭に立つ文化勲章受章者の書家、 井茂圭洞 さん(87)は「書道が日本文化として世界に理解されることを望んできた。登録によって国内でも盛んになってほしいとの思いで活動を始めて10年、実現に近づいて大変感謝している」と喜びを語った。
また、文化審議会は、既に登録された無形文化遺産に対象を追加する「拡張登録」の提案候補も選んだ。「和紙」に「越前鳥の子紙」(福井県)を、「山・ 鉾 ・屋台行事」に「常陸大津の御船祭」(茨城県)、「村上祭の屋台行事」(新潟県)、「 放生津 八幡宮祭の 曳山 ・築山行事」(富山県)、「大津祭の曳山行事」(滋賀県)の4行事を、「伝統建築工匠の技」に「手織中継表製作」を、それぞれ追加するよう提案する。拡張登録の可否は25年11月頃に決まる見通しだ。
無形文化遺産は、芸能や祭礼、工芸技術などを保護するための制度で、日本からは「能楽」や「和食」など22件が登録されている。