ペット販売の現場で、幼すぎる子犬や子猫の販売を禁じる動物愛護管理法の「8週齢規制」が形骸化している疑いが表面化した。
ペット業界の関係者は「出生日の偽装は珍しいことではない」と打ち明ける。子犬・子猫は小さくて愛らしい方が消費者に好まれる。繁殖業者やペットショップも生まれて早く販売した方がコストがかからない。市場原理と業者の都合から、生後56日以下で取引されるというわけだ。
同法は繁殖業者に出生日や出産状況について、記録・保存を義務づけている。ただ、出生日は申告制となっており、偽装された場合、獣医師らのプロでも見た目だけで判断するのは難しいという。
8週齢規制は、2012年の法改正で明記されたものの、ペット業界の反発を受け、21年5月まで激変緩和措置が取られていた。ペット業界は、より幼い子犬・子猫を取引しようとする慣習を断ち切らなければならない。業界に自浄作用が働かなければ、第三者による出生証明など、踏み込んだ対策が必要となってくるだろう。
幼齢期特有の愛くるしさは衝動買いを誘い、金銭的・時間的な余裕や飼育の知識が不十分なまま飼うことで遺棄につながりやすいとされる。犬や猫は、法律上ではモノとして扱われるが命ある動物だ。ペット業界だけでなく、飼い主となる消費者にも「命」と向き合う自覚と責任が求められている。【宮城裕也】