パーティー券収入のキックバックによる組織的な裏金づくり疑惑をめぐって、東京地検特捜部は12月19日、安倍派と二階派の事務所に強制捜査に入った。安倍派内では宮澤博行前防衛副大臣が「派閥から、(キックバックを)収支報告書に記載しなくて良いと指示があった」と暴露するなど、一気に統制がとれなくなり、混乱状態に陥っている。とくに「高木毅事務総長らによる派閥議員への口止めが指摘されている」(全国紙政治部記者)として、高木氏のこれまでの不祥事や政治家とての能力にも、改めて注目が集まっている。
暴露に動揺する高木氏、飲み会で「パンツ」が話題になると……
「派閥からかつて、収支報告書に記載しなくて良いと指示がございました」「はっきり申し上げます。(派閥から)『しゃべるな、しゃべるな』。これですよ」
国会閉会日の13日、今回の問題を受けて防衛副大臣を辞任することになった宮澤氏は、記者団に囲まれると意を決したように、派閥ぐるみのキックバックの不記載の実態を語った。翌14日には、同じく安倍派に所属する堀井学衆院議員も、2018~22年の5年間に計1千万円超のキックバックを受け取り、裏金にしていたことを認めた。「これに動揺したのが、安倍派の塩谷立座長や、5人衆と言われる派閥幹部ら。とくに『口止め』をしていた幹部として、現在事務総長を務める高木毅氏の名前が挙がっており、宮澤氏の暴露直後から、高木氏は記者団に追いかけられ、追及を受けていた」(全国紙政治部記者)
高木議員と岸田首相(高木氏SNSより)
「もはや安倍派に所属していても、プラスどころかマイナスの影響しかない。暴露した議員たちは、派閥の幹部ににらまれてもいいから、正直に話した方が再起もしやすいと踏んだのだろう。派閥のグリップがきいていないので、今後も誰が暴露するのか、みな疑心暗鬼という状況だ」(自民党関係者)派閥のグリップがきかない状況にあるのは、東京地検が総力をあげて捜査に臨んでいることもあるが、安倍晋三元首相亡き後の派閥幹部の力量不足によるところも大きい。とくに、政治資金パーティーの実務を担い、キックバックの不記載の流れを認識していたと指摘される高木毅事務総長については、その能力を疑問視する声が改めて高まっている。高木氏と言えば、「パーティー」問題以前に疑惑の追及を受けたのは、「パンティー」問題だった。「高木氏が復興相に就任した2015年、週刊文春と週刊新潮が相次いで、30代の頃の高木氏が、好意を抱いていた女性宅に合いカギを作って侵入し、パンツを盗んでいたなどと報道。高木氏は記者会見や国会で追及を受け、だらだらと汗をかきながら『そういったことはございません』と否定した」(全国紙政治部記者)ただ、捜査関係者が「高木氏が現場から逃げる様子が防犯カメラにしっかり映っていたが、敦賀市長でもあった高木氏の父が謝罪し、示談で終わった」と証言するなどし、「パンツ」疑惑は、地元では広く知られている話となっている。
家宅捜索のため自民党安倍派(清和政策研究会)の事務所に向かう東京地検特捜部(写真/共同通信)
記者会見や国会ではひたすら守りに徹して「パンツ」疑惑を否定してきた高木氏だが、飲み会の場では「大臣になったときは、あの問題ばかり聞かれて大変だったんだから」と自虐したり、記者の前でお気に入りの女性秘書から「パンツ」の話題を振られて「やめなさい!」と突っ込んだりと、半ば「ネタ」のようにもなっているという。
「パンツ」疑惑も、安倍派会長候補報道にまんざらでもなく……
そんな高木氏だが、安倍派の後継会長選びを巡っては、6月に読売新聞で「萩生田、西村両氏が先頭に立てば、突出した存在になると警戒する向きもある。そうした中で、高木氏を会長に推す案も浮上している」と「高木会長案」も報じられたこともある。「高木氏は『パンツ』疑惑もありますし、そもそも総理候補ではないので、最大派閥の長になったとしても『つなぎ』としかみられず、派内でのハレーションが少ないという利点はあった。ただ、高木氏は国会対策委員長として大した仕事もせず、国会会期中の平日も毎日のように、国会内のスポーツジムにのんきに通っていたような人物。野党が立憲、維新などに細かく分かれ、力がないから法案を順調に通せていただけで、官邸との意思疎通がとれていない場面は何度もあった。そんな人物が会長になっても最大派閥をまとめる力はないので、そもそも高木会長案の実現性は乏しかった」(全国紙政治部記者)それでも高木氏は、会長候補として自らの名前が挙がったことに喜びを隠しきれなかったという。「高木氏は『パンツ』疑惑を念頭に『会長になったら過去のこともいろいろ書かれるやろうなあ……』と心配しつつ、『お前がやれと言われたときの、心の準備はできている』『高木派って言われるのも悪くないなあ』と、周囲にまんざらでもない様子で語っていた」(同)
高木議員(本人SNSより)
そんな元会長候補・高木氏は、今年9月の党役員人事では交代させられそうになっていたところ、松野博一官房長官らに懇願し、なんとか国対委員長の続投を決めた。しかしそれもつかの間、安倍派事務総長として立件の可能性もささやかれる窮地に陥ることになった。「『宮澤議員が、政治資金収支報告書にキックバックを記載しないよう、派閥から指示があったと認めているが?』と記者団に問われた高木氏は、うつろな様子で『確認をしておりませんので、その事実についてまだここで話をするに至っておりません』と答えるのが精いっぱいの様子だった。高木氏とは長い付き合いの、お気に入りの女性秘書との関係もここに来て悪くなっているようで、秘書が知っていることを検察に洗いざらい話す可能性もある。まさに八方ふさがり状態だ」(自民党関係者)国対委員長に就任した後は多数の番記者を引き連れて歩き、支援者に「私の番記者がこんなにいるんだよ」とうれしそうに語っていた高木氏だが、今やパーティー券問題を追及する記者に連日追いかけられる始末。19日の強制捜査を受けて「捜査に協力していく」と述べてはいたが、本心では何を思うのか……。
自民党本部
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