自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑で、東京地検特捜部が安倍派と二階派の事務所に家宅捜索に入り、永田町に激震が走っている。安倍派はオリンピアンやテレビ業界出身の議員を多数抱えるタレント集団だが、面目は丸つぶれで存続の危機に立たされている。今後、安倍派所属というだけで選挙で苦戦することは確実で、同派の分裂、そして消滅というのも現実味を帯びてきた。
派閥を仕切る五人衆の松野博一氏は官房長官、西村康稔氏は経産相、世耕弘成氏は参院幹事長を辞任。萩生田光一政調会長と高木毅国対委員長は22日に辞任が了承される見通しで、幹部は一掃される。特捜部が松野氏や高木氏、西村氏ら歴代の事務総長経験者にメスを入れるかどうかが注目され、党内は戦々恐々。一方で今後、派閥の立て直しは困難を極めるとみられる。
泥船から逃げ出すかのごとく、防衛副大臣を事実上更迭となった宮沢博行衆院議員が140万円の不記載を自白し、「(不記載は)派閥からの指示だった」と暴露。内閣府副大臣を辞任した堀井学衆院議員も1000万円超のキックバックを認めるなど、“自白ドミノ”も始まっている。 堀井氏は元スピードスケートのリレハンメル五輪の銅メダリスト。同派は知名度が高い議員を多く抱える。派閥のオーナー的存在である森喜朗元首相が力を持ち始めた時から文部科学行政で幅を利かせ、国政選挙のたびに五輪メダリストやアナウンサー、タレントらを擁立してきた。
現職では通算7回五輪出場の橋本聖子参院議員、元テレビ朝日アナウンサーの丸川珠代参院議員、元おニャン子クラブメンバーの生稲晃子参院議員らが在籍。過去には現都知事で元キャスターの小池百合子氏や同じく元キャスターの高市早苗経済安保相、石川県知事に転身したプロレスラーの馳浩氏や、同じくプロレスラーの神取忍らも同派に在籍していた。
「今後の捜査次第でもあるが安倍派は萩生田氏のタカ派と、福田康夫元首相の息子・達夫氏らハト派のグループに分裂しかねない。数は力であり同派にいても冷や飯を食わされるだけとなれば、入閣待ちのベテラン組はあせるばかりだし、先が見えない若手は出ていくことになるでしょう」(党関係者)
派閥が力を失えば、選挙が近づいている同派議員は頭を抱えるしかないだろう。「丸川氏は衆院東京7区に鞍替えするが準備不足は否めない。そんな状況下で今回の騒動はマイナスでしかなく、落選危機でしょう。杉田水脈衆院議員もまだ衆院選の公認が決定しておらず、安倍元首相の後ろ盾を失ったこともあり、公認も中ぶらりんになるのでは。25年の参院選改選組では片山さつき参院議員が二階派から安倍派入りしたばかりだが、どちらもグレーでシャレにならない状況」(同)
ほかにも同派にはフランス・パリ視察で炎上した“エッフェル姉さん”こと松川るい参院議員、元大阪府知事の太田房江参院議員ら女性閣僚候補を抱えているが、同派所属というだけでミソをつけかねないだけに、今後の身の振り方が注目される。