教員の性暴力、後絶たず 減らない懲戒処分 対策も改善の兆しなく

児童や生徒への性暴力で懲戒処分を受ける教員が後を絶たない。千葉市立校と各市立高校を除く千葉県内の公立学校では2022年度、わいせつ行為やセクシャル・ハラスメント(性的嫌がらせ)による教員の懲戒処分は12件だったが、今年度も11月末時点で10件に上っている。【長沼辰哉】
「自らの性的欲求を優先し、被害者の未熟な性的関心に付け込んだ」。12月4日、千葉地裁松戸支部。13歳未満の女児に対する強制性交等などの罪で起訴された元教員の男性=3月に懲戒免職=に対し、本間敏広裁判長はこう非難し、懲役5年6月の実刑判決を言い渡した。
判決などによると、流山市内の小学校教諭だった男性は22年11月~23年1月、松戸市内の自宅などで複数回にわたって女児にわいせつ行為をした。女児は今も精神的に不安定な状態が続いているという。
こうした事態に県教育委員会は有識者会議の意見を踏まえ、教員に専門家による研修を受講させる、性犯罪に悪用されないよう校内の密室や死角をなくす、などの対策を講じている。23年度からは、校内でのわいせつ・セクハラ事案を調査した弁護士らが作成した報告書を教員の研修に活用し始めた。だが、改善の兆しは見られない。
教員の性暴力を無くすためには何が必要なのか。「わいせつ行為をする教員の心理は他の性暴力の加害者と変わらない。そのような教員の心理が特異なわけではない」。少年補導員やスクールカウンセラーの経験があり、教員の性暴力を研究する奈良大学社会学部の今井由樹子准教授(60)は指摘する。
今井准教授によると、一般的に人が性暴力に走るまでには、動機の壁▽良心の壁▽機会の壁▽被害者が抵抗する壁――の四つの壁を越える必要がある。だが、教員は校内で生徒と2人きりになる機会が多い上、児童や生徒が親近感から要請を拒絶しづらい。このため機会の壁と被害者が抵抗する壁のハードルが低い可能性があるという。「大切なのは、性犯罪の事件をひとごとだと思わず、誰でも起こしうる『自分事』にとらえることだ」と今井准教授は説く。
さらに、教員の中に過度にストレスをためている人がいないかなど、周囲の人たちが注意を向ければ防ぐことができる可能性があるとしている。
県教育委員会の懲戒処分件数
懲戒処分件数( )内はわいせつ・セクハラ事案
2019年度 25件(6件)
20年度 25件(14件)
21年度 16件(6件)
22年度 24件(12件)
23年度 23件(10件)
(11月末時点)
※監督責任による懲戒処分と、千葉市立校と各市立高校の懲戒処分を除く。

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