自民党の派閥パーティーをめぐる裏金事件は、安倍派(清和政策研究会)の事務総長経験者ら幹部が東京地検特捜部の事情聴取に呼ばれ、いよいよ派閥の組織的な裏金づくりの解明にメスが入る。
政治資金規正法(不記載・虚偽記入)の公訴時効のかからない2018年からの5年間に事務総長を務めたのは、古い順から下村元文科相、松野前官房長官、西村前経産相、高木前国対委員長の4人。事務総長は派閥の実務を担い、会長に次ぐナンバー2だ。会計責任者を務める事務局長は、民間企業出身で定年退職後に清和会の職を得ており、いわば永田町のシロウト。会計責任者の一存で巨額の裏金化を主導できるはずがないのだが、気になるのは、ここ数日の一部報道である。事務総長経験者が次のように周囲に説明しているというのだ。
「派閥の会長と会計責任者で決めていた」
「派閥の通帳すらほぼ見たことがなく、お金のことはわからない」
捜査対象の5年間の清和会会長は、細田前衆院議長と安倍元首相で、2人とも故人だ。どうやら事務総長らは“死人に口なし”で逃げる作戦らしい。
「捜査が本格化した今月上旬ごろから、永田町界隈では、安倍派は細田さんと安倍さんに責任を押し付けるんじゃないかと噂されていました。安倍派では、議員のパー券販売ノルマの減額を会長が差配していたといいますが、事務総長が派閥のカネについて知らないなんてあり得ません」(自民党関係者)
パー券収入のキックバックという裏金スキームは、安倍派では森元首相が会長だった20年前からあるとされる。長年の慣習になっているため、事務総長は細かな指示を行っていない可能性があり、特捜の捜査を知る専門家ほど事務総長の立件のハードルは高いと話す。
しかし、事務総長が悪事を認識していたのなら、止めるべき立場だろう。安倍派の裏金は最終的に10億円規模に膨らむ恐れもあるといわれている。松野と高木は自ら1000万円超のキックバックの恩恵を受けていたというし、“会長不在”で、派閥幹部の組織的責任が問われないのは市民感覚からかけ離れている。
派閥の会計責任者だけでなく、安倍派の歴代事務総長についても刑事告発した神戸学院大教授の上脇博之氏が言う。
「不記載を、まず事務方が勝手にはできない。会長が口を出していたとしても、事務総長が口を出していないことにはなりません。事務総長自身がキックバックを受けているのですから、まったく知らないはずはなく、むしろ容認していることになる。『死人に口なし』のしらじらしい嘘としか思えません」
ネット上には<もし東京地検が立件を諦めても市民は諦めませんよ。最後は検察審査会が待ってます>という投稿も。「死人に口なし」では、世論も納得しない。