新型コロナウイルスが5類に移行して、はじめての年末年始を迎える。当然ながら飲み会の場が増えることが予想される。飲酒運転の増加が懸念されるが、罰則がかつてより大幅に厳しくなっていることは周知の事実のはず。 しかし、厳罰化されてもなお、飲酒運転が根絶しないのはなぜなのか。2011年2月に、長男(当時16歳)の命を飲酒運転の車によって奪われて以来、飲酒運転撲滅の活動を続けるNPO法人はぁとスペースの理事長・山本美也子氏に意見を聞いた。 ◆厳罰化でも飲酒運転がなくならないのはなぜ? 飲酒運転の罰則には、免許取り消しや免許停止の「行政罰」、人身事故、物損事故に対する損害賠償請求といった「民事罰」があるが、「刑事罰」としては、2001年に「危険運転致死傷罪」が制定されている。その後、2007年に同法が厳しく改正される契機となった事故があるという。 「2006年、福岡市の海の中道で起きた事故です。飲酒運転による事故で3人の子供さんが亡くなりました。これによって、『今の刑では軽すぎる』という声が多く上がって厳罰化の流れが生まれました」(山本美也子氏、以下同じ) ただ、期待ほど飲酒運転が減っていないように思える。山本氏の長男が飲酒運転の車によって亡くなったのも厳罰化のあと。この点に関して、厳罰化は一定の効果があり、絶対に必要だとしながらこう述べる。 「法律があっても、裁判で適用されるハードルが高いんです。現状、危険運転が適用されない時の裁判所が出す理由として多いのが『判例がない』というものです」 前例に合わせると、罰則が甘かった過去に引っ張られた判決になる。遺族としては「この事故をしっかり見つめてほしいという気持ちになるのは当然であるし、社会的にも相対化ではない判決が必要ではないか。 ◆法律だけではカバーしきれない部分も… では、正しく適用されれば「危険運転致死傷罪」になる量刑設定は適切なものなのか。現在の法律では、飲酒運転によって人を死なせたり怪我をさせた場合、最長20年の懲役となっている。 「各地で講演をしていると、『まだまだ軽い』という声もよく聞きます。ただ、私は長く刑務所に入ることが良いわけでもないと考えています。刑務所の中で飲酒運転についてきちんと教育されることが、その後の被害者を生まないために大事なことです」 続いて法律の中身について。「道路交通法第65条」によって酒気帯び及び酒酔い運転の基準が規定され、飲酒運転は禁止されている。けれども、言い訳が通用する抜け道は存在するというから驚きだ。