関西空港でインバウンド狙いの白タク再び横行…容疑者は多国籍化、SNS個別集客で手口巧妙化

新型コロナウイルス禍の収束に伴って戻ってきた訪日外国人客を狙い、関西空港で再び白タク行為が横行している問題で、先月、ベトナム人の男女9人が道路運送法違反容疑で大阪府警などに逮捕された。コロナ禍前、中国系の組織的な違法営業が摘発されたことはあったが、ベトナム人の逮捕は初めてとみられる。訪日外国人客の多国籍化に伴い、ベトナム系や韓国系などアジアの様々な出身者が白タク行為に関わる一端が浮かび上がってきた。(坂戸奎太)

関西空港などの白タク行為は、訪日客の増加に伴い2017年頃から目立ってきた。2種免許が必要なタクシー運転手とは異なり、運転技術の未熟さや事故時の対応、労働時間の管理などの問題が指摘されている。
これまでは中国系のドライバーがスマホの配車アプリで依頼を受け、大阪や京都に送迎するケースが大半で、運賃はオンラインで決済していた。「友達」「家族を迎えに来た」と言い張ることが多く、警察は対応に苦慮してきた。
関西エアポートによると、関西空港の国際線を利用した外国人客数は11月、約130万人に上り、コロナ禍前の19年(同時期)の99%まで回復した。
これに伴い、コロナ禍で減った白タク行為が今春以降、関西空港の一般車乗降場で再び目立つようになった。

こうした状況の中、府警は11月7、8日、ベトナム国籍の20~30歳代の男女9人を道路運送法違反(無許可営業)容疑で逮捕した。それぞれ、国土交通相の許可を得ず、昨年11月~今年4月に複数回、自家用車にベトナム人らを乗せ、運賃を受け取って関西空港から勤務先や宿泊先へ運んでいたといい、略式起訴された。
府警によると、9人はそれぞれ個別にSNSで「シャトル必要な方はメールください」「空席多数」と呼びかけて集客していた。
「タクシー」と明示しないことで摘発を逃れる意図があったとみられるが、客を乗せる際に現金をやりとりする様子を、府警の捜査員が確認し、白タク行為にあたると判断した。
SNSで依頼してきた客に対し、関西空港から大阪市まで1人5000円程度、神戸市まで6000円程度と、タクシーに1人で乗った場合に比べて4~5分の1の運賃を提示。客同士を相乗りさせて売り上げを増やしていた。うち1人は、昨年8月から約1年4か月で計560回送迎し、700万円を稼いだ。
9人は「両親への仕送り代を稼ぐためにやった」などと供述。うち4人は高度な専門人材が対象の在留資格「技術・人文知識・国際業務(通称・技人国)」で来日。複数人が「給料が少なく、金がほしかった」と漏らした。
これまで多かった中国系のドライバーの多くはアプリに登録し、外国人向けの旅行会社から依頼を受けるなど組織的に活動。コロナ禍前には、大阪府警などがアプリの関連法人を摘発した。

今回の事件の背景には、訪日客の激増を受けて、ベトナムや韓国などアジアの様々な国からの出身者が白タクに手を出している現状があるとみられる。関西空港ではハングルのプラカードを掲げて客待ちするドライバーも確認されている。
大阪府警は「客が到着するまで近くで待機するなど手口が巧妙になっており、今後も摘発を進めていく」としている。
「ライドシェア」との違いは…タクシー会社が安全管理

一般のドライバーが有料で客を運ぶ行為は、白タク行為として原則禁止されている。深刻なタクシー不足を受け、政府は来年4月、普通免許を持つ個人が自家用車を使って有料で客を運ぶ「ライドシェア」を解禁するが、タクシー会社が、登録した運転手の教育や車両整備の管理、運行管理、運送責任を担うことで安全面に配慮し、白タク行為とは明確に区別される。
エリアは、タクシーが不足する地域や時間帯に限る。タクシー会社の配車アプリのデータを活用し、地域や時期、時間帯を明確化。都市部でも時間帯によって利用が可能となる見込みだ。
海外ではライドシェアサービスが普及。国内では、観光地を抱える自治体などから解禁を求める声が上がり、政府で導入に向けた議論がなされてきた。タクシー会社以外がライドシェアに参入する「全面解禁」については今後、議論が行われる。
◆白タク行為=国土交通相の許可を得ず、「白ナンバー」の自家用車などでタクシー営業を行う行為。道路運送法で禁止され、違反者には3年以下の懲役や罰金などが科される。

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