回顧2023 自衛隊で専門知識活かす〝適材適所の採用〟が必要 深刻な目指す人の減少と辞職の増加 穴を掘ってばかり…配置めぐり失望も

防衛問題研究家 桜林美佐氏
まず、11月29日に米空軍の8人を乗せたCV22オスプレイが鹿児島県・屋久島沖で墜落した事故に対し、心より哀悼の意を表します。
日本国内からは相変わらず批判的な声ばかりです。8人のうち2人は沖縄の嘉手納基地、6人は東京の横田基地所属でした。感謝祭(11月23日)が終わり、12月に入ると、どこの基地でもクリスマスツリーの点灯式が行われ、軍楽隊の演奏と子供たちの声が飾り付けられた大きなツリーを囲みます。
愛する人を失い、どんな気持ちでこの時期を過ごしているのか、異国の地でどれだけ不安の中にいるか、受入れ国としてはそうした家族の心情をおもんばかり、最大の協力こそすべきではないのでしょうか。
同盟国の国民の悲しみに寄り添うどころかむち打ち、また、イスラエルに対するイスラム原理主義組織ハマスのテロとその後について、日本国内に「テロへの非難」ではなく、「反ユダヤ主義的な論調」が散見されるようになっていることも非常に気がかりです。
自衛隊については、「抜本的防衛力強化」を着々と進める途上にありますが、その一方で円安や物価高で予定していた調達ができなくなっているなど、ブレーキがかかる状況も生じています。計画の実効性について、しっかり見る必要があります。
深刻な問題は、自衛官を目指す人が減り続け、辞めていく人が多いという事実です。辞める理由としては「自身のしたいことができない」というものも多くあります。予備自衛官も同様で、サイバー分野に長けた人が穴を掘ってばかりとか、「専門知識を持っているのに活かされない」といった配置で失望させ、人材をみすみす失っている事例も少なくありません。
確かに、組織の性質上、「雑巾がけ」的な修行期間を経て心身を鍛える利点はあると思います。だが、このままでは鍛える相手もいなくなってしまいます。処遇改善と同時に、適材適所の「ジョブ型」採用が必要な時代になっているのかもしれません。
また、自衛隊のあらゆる物品の「備蓄」も、そろそろ着手するときになっていると思います。維持コストや予算制度の変更など、容易ではないと思いますが、新しい装備が入っても古い物を廃棄せずに保管しておくことは、輸出の可能性も残し、それによる諸外国との関係構築にも資することでしょう。
さくらばやし・みさ 防衛問題研究家。1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書・共著に『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出版)、『自衛官の心意気』(PHP研究所)、『危機迫る日本の防衛産業』(産経NF文庫)、『陸・海・空 究極のブリーフィング』(ワニブックス)など。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする