原子力規制委員会は27日午前、東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)に出していた事実上の運転禁止命令の解除を決定した。不備が指摘されてきたテロ対策について「自律的な改善が見込める」と判断した。2年8か月ぶりに再稼働に向けた準備が再開されることになり、今後は、新潟県など地元自治体の同意が焦点となる。
同原発では2021年1月以降、侵入検知設備の不備や、所員によるIDカードの不正利用など核物質防護上の問題点が相次いで発覚。規制委は同年4月、原子炉等規制法に基づき核燃料の移動を禁ずる是正措置命令を出した。
東電は、侵入検知設備の誤作動対策や、生体認証装置の拡充などの対策を実施。同原発内に社長直属の部署を新設し、社員の意識や行動を定期的に監視する仕組みも整えた。
規制委は今年5月の時点では、監視体制などで改善が不十分として命令解除を見送っていたが、規制委事務局の原子力規制庁は今月6日、「是正が図られている」とする報告書案を公表。これを受け、規制委の山中伸介委員長らは同原発を視察したり、東電の小早川智明社長から意見を聞いたりして命令解除の是非を議論してきた。
東電は今後、同原発の再稼働に向けて、新潟県と、立地自治体である柏崎市、刈羽村の同意を得るとしている。両市村長が再稼働におおむね容認の姿勢を示す一方、花角英世知事は態度を明らかにせず、地元同意の先行きは不透明だ。
花角知事は、規制委の命令解除後に再稼働の是非を判断し、県民の意思を確認する流れを示している。県民の意思を確認する方法は、「信を問う方法が責任の取り方としてもっとも明確だ」と繰り返し、出直し知事選の可能性も否定していない。