安倍元首相を「裏切った」のは誰? 還流廃止指示も暗殺後に「撤回」…〝特捜標的〟経緯に焦点 聴取受けた派閥有力者は否定も

自民党派閥のパーティー収入不記載事件で、東京地検特捜部は、松野博一前官房長官や高木毅前国対委員長など、安倍派(清和政策研究会)幹部5人を聴取した。いずれも、パーティー券の販売ノルマを超えた議員側への還流分が、政治資金収支報告書に記載されていなかったことを、「知らなかった」と説明しているという。こうしたなか、安倍晋三元首相の指示で2022年に「還流廃止」の方針が示されながら、安倍氏の暗殺後に方針が撤回されたとの指摘がある。特捜部の標的が「裏切り者」に向けられている可能性が出てきた。
特捜事務総長の「役割」に注目
「派閥の収支報告書への不記載は関知していなかった」
関係者によると、安倍派幹部はこう関与を否定しているという。特捜部の任意の事情聴取にも、同様の説明をしたとみられる。
特捜部は、松野、高木両氏と、安倍派座長の塩谷立元文科相、萩生田光一前党政調会長、世耕弘成前党参院幹事長らの任意聴取を行った。
派閥の会計責任者は、パー券収入の還流や裏金化の事実関係を認めているという。特捜部は、所属議員の販売実績や還流「リスト」も把握しているとされる。
司法関係者は「捜査は『裏金化の全体像』や『指示系統の解明』が焦点だ。派閥運営の全体を担う事務総長は会計責任者の上役にあたり、その役割に注目しているようだ」と指摘する。
暗殺後に「撤回」…経緯に焦点
さらに、注目されるのが安倍氏への〝裏切り〟だ。
ジャーナリスト、岩田明子氏のリポート(12日発行)によると、安倍氏は21年11月に初めて派閥会長に就任した。その後、還流の慣習を知り、22年2月に「このような方法は問題だ。ただちに直せ」と会計責任者を叱責、2カ月後に改めて事務総長らにクギを刺したという。同年5月のパーティーでは方針が反映されたが、同年7月、安倍氏は凶弾に倒れた。その後、方針は撤回されたとされる。
この間、何があったのか。
永田町関係者は「安倍氏の指示を無視し、裏切った人物がいたことになる。派閥の方針変更は、有力者の承認なしにできない。特捜部もこの経緯に注目するだろう」と語っている。

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