辺野古「代執行」で来月にも工事再開見通し…玉城知事は厳しい表情、住民からは歓迎と憤り

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事は28日午前、国が県に代わって工事の設計変更を承認する「代執行」が行われたことで、来月中旬にも中断中の区域の工事が再開する見通しとなった。玉城デニー知事は国を強く非難したが、長年にわたる国と県の対立に 翻弄 され続けた宜野湾や辺野古の住民からは、いさかいが続くことを嘆く声も聞かれた。
玉城氏は28日午前、県庁で年末恒例の報道各社による新春用インタビューに応じていた。以前から予定されていたため国の「代執行」の時間と重なり、その最中に一報が飛び込んだ。記者から質問を受けた玉城氏は厳しい表情を浮かべ、「沖縄県の苦難の歴史と米軍基地の整理、縮小を求め続ける県民の願いに反し、県の処分権限を奪い、新たな基地を建設しようとするものだ」と語気を強めた。
今後も移設反対を堅持するのかを問われ、「(別の)設計変更の申請で(県に)承認を求める行政手続きは国としても取らざるを得ない。審査段階で問題を提起せざるを得ない」と述べ、これまで同様の対応を続ける考えを明らかにした。一方で、「対話によって物事を解決するという姿勢を国には求めたい」とも語った。
工事が再開される見通しの名護市辺野古では、代執行を歓迎する声と玉城氏を支持する声が交錯した。
「やっとという感じ。もっと早く代執行が行われても良かったくらいだ」。元名護市議会議長で辺野古地区の行政委員を務める島袋権勇さん(75)は歓迎した。「住宅街にある普天間ではいつ事故が起きてもおかしくない。早く危険性を取り除く必要がある」との考えから、辺野古の振興策の実現などを条件に移設を容認してきた。「一日も早く工事を再開してほしい」と話した。
辺野古に住む男性(67)は「国が一方的に地方を押さえつけるというおかしなことが起こっている」と憤った。移設に反対し、辺野古にある米軍基地キャンプ・シュワブのゲート前で抗議行動を続けてきた。「これからもおかしいことはおかしいと声を上げ続ける」と述べ、「知事は県民を守るために一歩も引かない姿勢を示してほしい」と注文した。
宜野湾市の米軍普天間飛行場そばで約30年暮らす同市真栄原の建設業の男性(73)は長年、電話が中断されるほどのジェット機のエンジン音などに悩まされてきた。国と県の裁判が長期化し、飛行場返還が進まない状況に「私たちがどれだけ迷惑をかけられているか。子や孫のことを考えると早く移設を進めてほしい」と訴えた。
ただ、移設で辺野古の住民が騒音被害を被る可能性を危惧する。「私たちと同じ思いはしてほしくない。代執行を喜んでばかりいられないですよ」と複雑な思いも口にした。

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