気象庁の有識者検討会が25日、火山灰警報の導入を提言した。富士山の大規模噴火で首都圏にどんな影響が出るのか。検討会座長を務めた藤井敏嗣東大名誉教授に聞いた。
◇
--火山灰の降灰情報はなぜ必要なのか
「富士山が高度1万メートルまで噴煙を上げる大規模噴火をすると火山灰が偏西風に乗って非常に速い速度で広がる。100キロ離れた東京まで1~2時間。青空が急に真っ黒になり石の粉が降る。電灯をつけても夜のように暗い。遠くへ広がるので火山近くの住人にしか経験がない。どんな現象か知っておくべきだ」
--富士山噴火時に首都圏はどうなるのか
「約300年前の『宝永噴火』と同様の爆発的噴火が起こると、ライフラインに依存する都市生活は困難に陥る。ただ、灰で直接命を失う危険はない。降灰30センチ以上で原則避難を呼びかけるが、徒歩なら外出も可能だ」
--企業の関心は高い
「サプライチェーン(供給網)の問題が大きい。道路管理者が除灰作業を行う上で降灰範囲の丁寧な予測が要るし、電線や線路の除灰に当たる電力や鉄道も人員を集める上で必要だ。宝永噴火は16日間続いた。何もしなければ首都機能はまひし、2週間も続けば日本経済が沈没しかねない」
--対策は何が必要か
「例えば、路面の傾斜や湿潤の影響も調べないと高速道路のランプで渋滞が多発する。他にも火力発電所の吸気フィルターへの影響など研究すべきことは多々ある」
--現状、富士山に噴火の兆候はあるのか
「全くないが、他の前例からすると突然地震が増え、数時間後に噴火もあり得る。富士山は5600年前から30年に1回は噴火していたのに過去300年は休んでいる。兆候は直前なので極端に言えば明日起きても不思議ではない」(聞き手 市岡豊大)
◇
ふじい・としつぐ
専門は火山学。昭和59年に東大地震研究所助教授、平成元年に同教授、9年に同所長。15年に火山噴火予知連絡会会長に。現在、東大名誉教授で火山調査研究推進本部・政策委員会委員長。「マグマ学」を提唱するなど日本の火山学をリードし、火山防災にも力を入れている。